HSBCのシャオミ(小米集団)に対する最新の見方は、ひと言でいえば「なお強気、ただし実行力待ち」だ。目標株価の引き上げは前向きな材料だが、2026年の成長ストーリーが本物かどうかは、YU7 GTを含むEV新モデルが予約の熱気を実際の納車と利益に変えられるかにかかっている。
HSBCの最新判断:買い継続だが、懸念も明示
HSBC Global Investment Researchは、小米集団(Xiaomi-W、01810.HK)の目標株価をHK$54へ引き上げ、「Buy(買い)」を据え置いたと報じられた[2][
17]。香港上場のシャオミ株に対する見方としては明確に強気だが、報道された内容は単純な楽観論ではない。
同報道によると、シャオミ株は3月末の2025年業績発表後に弱含んでいた。主因として挙げられたのは、メモリ価格の上昇がスマートフォン事業の採算を圧迫していること、そしてモデル移行期の影響で第1四半期の自動車納車が予想を下回ったことだ[2][
17]。
HSBCはまた、調整後純利益予想を1%引き上げたとされる[2]。これはプラス材料ではあるものの、大幅な上方修正というよりは小幅な見直しだ。投資家にとっての本題は、スマホの部材コスト上昇を吸収できるか、そしてEV事業が再び納車ペースを高められるかにある。
なぜYU7 GTが注目されるのか
シャオミの雷軍CEOは、YU7 GTシリーズを5月末に正式発表すると述べたと報じられている[19]。別の報道では、YU7 GTは990馬力級の高性能EVとして紹介された[
18]。
ただし、株式市場にとって重要なのはスペックそのものではない。YU7 GTが、シャオミのEV事業を「初期話題で売れたモデル」から「継続的に台数と利益を積み上げる事業」へ押し上げられるかどうかだ。
すでにYU7ファミリーは、市場の期待を大きく動かしている。Fortuneは、YU7 SUVが25万3,500元の開始価格で、発売後1時間に28万9,000件の注文を集め、シャオミ株が8%上昇して過去最高値を付けたと報じた[23]。もっとも、予約や注文の勢いはセンチメントを押し上げても、2026年の業績を決めるのは納車台数、価格維持、生産効率、粗利率だ。
2026年成長への効き方:3つのルート
YU7 GTが2026年の成長材料になるとすれば、主に次の3点を通じてだ。
- 納車台数の押し上げ。 GTが既存モデルから需要を奪うだけでなく、新しい顧客層を取り込めれば、EV事業の立ち上がりを支える可能性がある。ある報道では、シャオミのEV納車は3月の約2万1,400台から4月には3万台超へ回復し、経営陣は2026年末までに55万台を目指しているとされた[
5]。
- プレミアム化と収益ミックスの改善。 CMBIは、シャオミの2025年第1四半期調整後利益が107億人民元となり、前年同期比64%増、前四半期比28%増だったとした。スマホの販売ミックス改善、IoTの平均販売価格上昇、スマートEVの粗利率改善が寄与したという[
1]。同レポートは、スマホとEVのプレミアム化、IoTとEVの生産能力拡大が売上構成と利益成長を改善するとの見方も示した[
1]。
- エコシステム企業としての説得力。 CMBIは、シャオミのHuman x Car x Homeエコシステム拡大を前向きに評価している[
1]。YU7 GTが成功すれば、自動車が単発の新規事業ではなく、スマホ、IoT、家電とつながる消費者向けハードウェア戦略の一部だという見方を強める。
それでも「発表=利益成長」とは言い切れない
注意すべき点は、2026年のシャオミにはなお逆風があることだ。HSBCが株価軟化の理由として挙げたのも、スマホのメモリコスト上昇と第1四半期の自動車納車の弱さだった[2][
17]。
別の2026年見通しでは、シャオミは成長がいったん踊り場に入る年とされ、スマホ事業ではメモリコスト上昇に対して販売数量と価格のバランスを取る必要があり、EV事業は供給制約型の局面から需要主導型の局面へ移ると指摘された[4]。
競争環境も厳しい。Fortuneは、YU7が中国の混み合ったEV市場に投入されたと報じている[23]。高性能モデルはブランドイメージを高める一方、競合が値下げで対抗したり、生産制約で納車が伸び悩んだりすれば、粗利率の改善は簡単ではない。
市場予想にも慎重さがにじむ。Simply Wall Stの集計では、年次報告後にシャオミをカバーする36人のアナリストが、2026年売上高をCN¥500.4bn、つまり前12か月比9.4%増と予想する一方、法定1株利益は30%減少すると見込んでいた[9]。売上は伸びるが利益には圧力がかかる――この組み合わせこそ、投資家がYU7 GTの「台数」だけでなく「利益貢献」を見る理由だ。
発表後に見るべき数字
YU7 GTが本当の意味で2026年のカタリストになるには、発表後のデータが伴う必要がある。注目点は次の通りだ。
- 5月末とされる発表後の正式価格、注文状況、予約から購入への転換率[
19]
- GTが納車スケジュールに入った後の月次EV納車台数
- EVの平均販売価格と粗利率。過去のHSBC関連報道でも、EVのASPと粗利率の動きが自動車事業の評価材料として扱われていた[
25]
- メモリ価格上昇下でのスマートフォン粗利率[
2]
- 納車と粗利率の実績が見えた後の、2026年利益予想の修正方向[
2][
9]
結論として、HSBCのHK$54目標と「買い」継続はシャオミ株にとって追い風だ。ただし、その強気シナリオはYU7 GTの発表会だけで完成するものではない。5月末のローンチが好調でも、その後に安定した納車と採算改善が確認されて初めて、2026年の成長ドライバーとして市場に織り込まれていくことになる[19]。






