RWA(Real World Assets、現実資産)のデータ基盤であるRWA.xyzによると、2026年5月3日時点で「Tokenized U.S. Treasuries」分類の総額は約152億ドルだった。同じ画面では、30日間の増加率が7.50%、追跡対象が76資産/プロダクト、保有者が約5万8,645人、7日平均APY(年換算利回り)が約3.36%と示されている。[8]
ここでまず押さえたいのは、この152億ドルが「米国債市場全体」の数字ではないことだ。対象はあくまで、ブロックチェーン上で発行・管理・流通される米国債関連プロダクト、つまりオンチェーン/トークン化米国債の市場である。[8]
152億ドルとは何を数えているのか
トークン化米国債といっても、実態は一枚岩ではない。RWA.xyzの分類には、短期米国債や米国債レポへのエクスポージャー、トークン化されたノート、トークン化ファンド持分、現金と短期米国財務省証券を準備資産とするステーブルコイン型の構造などが含まれる。[20][
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| 指標 | 2026年5月初めのスナップショット | 読み方 |
|---|---|---|
| 市場総額 | 約152億ドル | RWA.xyzのTokenized U.S. Treasuries分類の総額。[ |
| 30日変化 | +7.50% | 同分類で資産規模が増えていることを示す。[ |
| 資産/プロダクト数 | 76 | 市場はすでに少数の実験的プロダクトだけではない。[ |
| 保有者数 | 約5万8,645人 | なお、オンチェーン商品としてはまだ発展途上の市場と見るべき水準。[ |
| 7日平均APY | 約3.36% | 分類全体の平均利回りのスナップショットであり、個別商品の利回りではない。[ |
この口径の違いは重要だ。たとえばUSYC、USDY、USDtbはいずれも米国債や短期財務省証券に関係するが、法的な形、投資家の対象、準備資産の持ち方、リスクの所在は同じではない。[20][
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プラットフォーム別ではCircle、Ondo、Securitizeが上位
RWA.xyzのプラットフォーム別データでは、2026年5月初めの上位3者はCircle、Ondo、Securitizeだった。市場シェアはそれぞれ19.13%、18.76%、17.49%で、3者合計では約55.4%に達する。[8] Franklin Templeton Benji Investmentsを加えた上位4者では、合計シェアは約68.9%となる。[
8]
| 順位 | プラットフォーム/機関の口径 | 総額 | 市場シェア | 主なプロダクト・役割 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Circle | 約29億ドル | 19.13% | 主にCircle USYC。USYCのプロダクトページでは総額約29.08億ドル。[ |
| 2 | Ondo | 約29億ドル | 18.76% | USDY、OUSGなど米国債関連プロダクトを展開。[ |
| 3 | Securitize | 約27億ドル | 17.49% | BlackRock BUIDLのプロダクトページでは、プラットフォームがSecuritizeと記載されている。[ |
| 4 | Franklin Templeton Benji Investments | 約21億ドル | 13.50% | BENJIはFranklin OnChain U.S. Government Money Fundに対応。[ |
このため、「BlackRockが首位なのか」という問いは、どの口径で見るかによって答えが変わる。プラットフォームランキングではBUIDLはSecuritizeに分類される。一方で、プロダクト名はBlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fundで、ティッカーはBUIDLである。[21]
プロダクト別の中核はUSYC、BUIDL、USDY、BENJI
プロダクト単位では、RWA.xyzのGovernment Securitiesスナップショットが2026年5月4日時点でUSYC、BUIDL、USDY、BENJIを上位4プロダクトとして示している。[29] 個別ページの数値を合わせると、この4プロダクトだけで約96.8億ドルとなり、152億ドル規模の分類全体の約64%に相当する。[
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| プロダクト | 関連プラットフォーム/発行構造 | 2026年5月初めの規模 | ポイント |
|---|---|---|---|
| Circle USYC | Circle | 約29.08億ドル | 短期米国債と米国債レポへのエクスポージャーを提供。7日APYは約3.19%。[ |
| BlackRock BUIDL | BlackRock/Securitize | 約25.82億ドル | BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund。RWA.xyzではプラットフォームがSecuritizeとされている。[ |
| Ondo USDY | Ondo | 約21.40億ドル | 非米国の個人・機関向けのトークン化ノート。短期米国債と銀行要求払い預金のポートフォリオで裏付けられる。[ |
| Franklin BENJI | Franklin Templeton | 約20.52億ドル | Franklin OnChain U.S. Government Money Fund。[ |
| Ethena USDtb | Ethena/Anchorage Digital Bank | 約9.34億ドル | 現金と短期米国財務省証券で全額準備されるTreasury-backed stablecoin。一部準備資産にBUIDLを保有。[ |
| Superstate USTB | Superstate | 約8.14億ドル | Superstate Short Duration US Government Securities Fund。[ |
| Ondo OUSG | Ondo | 約6.82億ドル | 機関投資家向けマネーマーケットファンドへの投資を通じてオンチェーンで米国債エクスポージャーを提供。主な保有先はBUIDLで、Franklin Templeton、WisdomTree、Fidelity、Wellington/FundBridgeのビークルにも配分する。[ |
なお、同じGovernment Securitiesのスナップショットには、JTRSYが約12億ドル、WTGXXが約9.781億ドルとしても表示されている。[29] ただし、そのスナップショットだけで確認できるのは名称と規模に限られるため、商品構造やリスクを比較するには個別プロダクトの情報が必要になる。[
29]
BUIDLがランキング以上に重要に見える理由
表面的にプラットフォーム順位だけを見ると、首位はCircle、Securitizeは3位である。[8] しかし、プロダクト間のつながりまで見ると、BlackRockのBUIDLは市場の基盤的なノードになっている。
第一に、BUIDL自体の規模が約25.82億ドルと、単一プロダクトとして最大級だ。[21] 第二に、OndoのOUSGはポートフォリオの主要部分としてBlackRockのBUIDL fundを保有し、さらにFranklin Templeton、WisdomTree、Fidelity、Wellington/FundBridgeのビークルにも配分している。[
19] 第三に、EthenaのUSDtbも準備資産の一部にBlackRockのBUIDLを保有している。[
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つまりBUIDLの影響力は、単独の運用残高だけでは測れない。他のトークン化プロダクトの裏側に組み込まれることで、オンチェーン米国債市場の「部品」としても存在感を持っている。[18][
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ランキングを見るときの3つの注意点
1. プラットフォーム口径と運用会社口径は同じではない
RWA.xyzのプラットフォーム別ランキングでは、BUIDLはSecuritizeに分類される。一方、BUIDLの正式名称はBlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fundである。[21] そのため、「Securitizeのプラットフォームシェア」と「BlackRock BUIDLというプロダクトの影響力」は、同じ話ではなく、別のレイヤーの話として分けて読む必要がある。[
21]
2. 「トークン化米国債」は同じリスクの商品群ではない
USYCは短期米国債と米国債レポへのエクスポージャーを提供する商品であり、USDYは短期米国債と銀行要求払い預金によって裏付けられたトークン化ノートである。[20][
17] USDtbは、現金と短期米国財務省証券で全額準備されるTreasury-backed stablecoinと説明されている。[
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同じ分類に入っていても、投資家の権利、償還条件、裏付け資産、発行体・保管体制は異なり得る。したがって、「トークン化米国債」というラベルは市場を把握するためには便利だが、個別商品のデューデリジェンスの代わりにはならない。[20][
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3. 数字はスナップショットであり、固定順位ではない
RWA.xyz上の市場総額、プラットフォームシェア、個別プロダクトの規模、30日変化率は、資金流入、償還、データ更新によって変わる。[8][
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25] したがって、ここでの勢力図は2026年5月初め時点の市場像であり、恒久的な順位ではない。[
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まとめ:市場は100億ドル台半ば、ただし主導権は集中
2026年5月初め時点で、トークン化米国債市場は約152億ドルに達し、30日間で7.50%増加していた。[8] 大枠では、プラットフォーム側ではCircle、Ondo、Securitize/BlackRock、Franklin Templetonが先行し、プロダクト側ではUSYC、BUIDL、USDY、BENJIが中核を形成している。[
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20][
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今後見るべきなのは、単なる市場総額だけではない。どのプロダクトが他のプロダクトの裏付け資産や主要保有先になっているかが、市場の実質的な力関係を左右する。特にBUIDLは、自身の規模が約25.82億ドルに達するだけでなく、OUSGの主要保有先であり、USDtbの準備資産の一部にもなっているため、トークン化米国債市場の重要な基礎プロダクトの一つといえる。[21][
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