発表の練習では、あとから録画を見返したり、誰かに評価してもらったりする方法が一般的です。このアプリの着眼点は、話している「その場」で助けること。人前で話している最中に改善点へ気づきやすくする、実践寄りの支援と言えます。
別の受賞作は、アクラの洪水区域から人が逃れることを助けるアプリです。
これは、アクセシビリティを「障がいの有無」だけでなく、危険な状況で必要な情報や行動にたどり着けるかという問題として捉えた例です。洪水のような緊急時には、避難に関する判断を助ける導線が大きな意味を持ちます。この受賞作は、避難という具体的な行動にAIとアクセシビリティ重視の設計を結びつけています。
音楽の分野では、実物のヴィオラがなくても演奏できるアプリが紹介されています。
楽器は、価格、保管場所、練習環境などの理由で、誰にとってもすぐ手に入るものではありません。仮想的に演奏できる仕組みは、楽器を所有していない人にも、音楽の練習や探究を始める入り口を作ります。
もうひとつは、手の震えを心配せずにiPadで絵を描けるよう支援するアプリです。
iPadでの描画は、線の細かな制御が作品の仕上がりに影響します。手の震えがある人にとって、その「わずかなブレ」は創作のハードルになり得ます。このアプリは、震えによって描くことをためらわなくて済むようにし、創作の入口を広げるものです。
4つの例に共通しているのは、AIを使って人の体験を置き換えるというより、発表する、避難する、演奏する、描くといった行為に参加しやすくしていることです。
Appleによると、今年の受賞者の多くは、自分のコミュニティや家庭での会話から着想を得て、アクセシビリティを中心に据えたアプリを設計しました。
なお、本稿ではアプリ名を無理に補っていません。出典で確認できる範囲を超えず、Appleが示した解決課題に基づいて整理しています。