報道では、このパッケージが米軍、とりわけペルシャ湾の米軍を念頭に置いたものとして描かれている 。また、提案書にはイラン沖の島々を示す地図が含まれていたとされ、脅威の中心が湾岸周辺にあることをうかがわせる
。
通常の対ドローン防御では、操縦用の無線リンクや航法信号を妨害する「電子戦」が重要になる。ところが、操縦命令がケーブルで届くなら、妨害すべき電波が少なくなる。つまり、防御側はジャミングや偽信号による妨害に頼りにくくなる 。
もちろん、これは「撃ち落とせない」という意味ではない。だが米軍側は、電子戦だけで止める発想から、より早い発射地点の探知、物理的な迎撃、装備や施設の防護、部隊の分散、発射チームへの対処へと比重を移さざるを得なくなる。
ある報道は、ケーブル制御型のドローンが40km超の精密攻撃を可能にするとまとめている 。この距離はペルシャ湾のような狭い海域では戦術的に大きい。一方で、それはあくまで短距離の戦場用システムであり、中東全域の米軍拠点をそれだけで射程に入れる兵器とは言いにくい
。
米軍や同盟国軍は、ドローン対処で電子戦に大きく依存してきた。だが光ファイバー制御であれば、無線リンクを断つという従来型の妨害が効きにくい 。防御側に選択肢がなくなるわけではないが、「電波を乱して止める」だけでは不十分になりやすい。
1機ごとの性能が限定的でも、数がそろえば防御側のコストは跳ね上がる。安価なドローンを高価な迎撃手段で何度も落とす構図になれば、守る側が先に疲弊する可能性がある。
今回の報道は、繰り返しペルシャ湾の米軍を脅威対象として結びつけている 。5,000機の光ファイバー・ドローンは短距離型とされるため、最も警戒すべきなのは、イラン側またはイランに近い勢力の発射地点から戦術的な範囲に入る米軍の艦艇、施設、装備、部隊だ
。
別の報道では、ロシアがイランに対し、ウクライナ戦争で用いたドローン戦術や標的設定に関する、より具体的な助言を行っていたとも伝えられている 。もし機体と訓練が組み合わされれば、単なる装備移転よりも実戦的な意味を持つ。
ロシア製システムやロシアの訓練を受けた部隊が、後に米軍要員への攻撃に使われた場合、米国の対応は単純ではなくなる。発射部隊を狙うのか、イランの指揮系統を問題にするのか、補給網やロシア側の支援まで含めて対応するのか。軍事的判断に加え、政治的な判断も重くなる。
一方で、この5,000機の短距離光ファイバー・ドローンだけで、イランが米軍と同等の軍事力を得るわけではない。報道上も、これらは短距離システムとされている 。運用には近い発射地点、操縦者、標的情報、整備体制、訓練が必要になる。
また、今回の報道は「ロシアがそうした提案を準備した」とする内容であり、公開情報の範囲では、移転が完了し、配備済みの能力になったとまでは確認されていない 。ここを飛ばして「すでに5,000機が実戦配備された」と読むのは早計だ。
ロシアの報じられた提案が事実で、実際に運用可能な形になった場合、米軍にとっての脅威はかなり具体的に変わる。中東全域を一気に覆う長距離攻撃能力というより、ペルシャ湾周辺で、ジャミングしにくい短距離ドローンが大量に使われるリスクが高まるということだ 。
つまり本質は「射程」よりも「近距離で止めにくい攻撃層」が厚くなる点にある。5,000機という数、光ファイバー制御、操縦訓練が組み合わされば、米軍の対ドローン防御はより高価で、より消耗的で、より難しいものになる。ただし、現時点で最も重要な留保は変わらない。これは機密文書に関する報道であって、公式に確認された引き渡しではない 。