一方で、伸び率が約6カ月ぶりの低水準になったことも事実だ 。AI関連需要を背景に高成長が続いてきたTSMCに対して、市場の目線はかなり高くなっている。そのため、二桁増でも「減速」と受け止められやすい。
月次売上は1カ月、つまり30日間分の数字であり、月ごとの振れもあり得ると報じられている 。さらに、4月売上は3月の4,151.9億台湾ドルから約1.1%少ない水準にとどまったとの報道もある
。このため、4月単月だけで需要の転換点と断定するのは難しい。
むしろ重要なのは、4月が一時的な足踏みなのか、それともトレンドの始まりなのかだ。報道によれば、アナリストは平均でTSMCの4〜6月期売上成長率を約35%と見込んでいる 。その水準が市場の基準であるなら、5月と6月の売上がより大きな意味を持つ。
現時点の材料を見る限り、先端AIチップ需要が急にしぼんだとまでは言えない。TSMCは4月に通期売上見通しを引き上げ、先端AIチップ需要に対応するため今年の設備投資を増やす方針を示した 。これは、通常なら需要急減を警戒する企業の動きとは言いにくい。
第1四半期の実績も強かった。複数の報道では、TSMCの第1四半期売上は約356億〜357億米ドルで、前年同期比約35%増だったとされている 。また、Reuters報道を掲載したWHTCによれば、第1四半期利益は58%増の過去最高となる5,725億台湾ドルとなり、8四半期連続の二桁成長を記録した
。
もちろん、これらの数字は今後も成長が加速し続ける保証ではない。しかし、少なくとも4月の伸び率鈍化だけを根拠に、AIチップ需要がピークアウトしたと結論づけるには材料不足だ。
投資家にとっての本当の論点は、4月の売上が単独で弱かったかどうかではない。TSMC株に、ほぼ完璧な成長継続が織り込まれていたかどうかだ。
第1四半期決算をめぐる報道では、TSMCはAIインフラ投資の大きな受益者であり、先端チップの強い受注に支えられている企業として位置づけられていた 。そうした見方が広がっている局面では、健全な二桁成長であっても、直近の勢いに比べて見劣りすれば株価の重荷になり得る。
もう一つの注目点は、設備投資と利益率だ。設備投資の増加は、TSMCが需要の見通しに自信を持っているサインにもなる。一方で、MarketBeatはTSMCの決算後の見方として、ガイダンス引き上げや設備投資増加に触れつつ、複数の粗利益率への逆風も指摘している 。
4月の鈍化がより深刻に見えるのは、次のような材料が続いた場合だ。
その場合、4月の鈍化は強すぎた第1四半期の後の調整として受け止めやすくなる。市場が確認したいのは、AI需要が消えたかどうかではなく、TSMCが高い期待に見合うペースで成長を続けられるかどうかだ。
TSMCの4月売上鈍化は、警戒すべき材料ではある。ただし、慌てる材料ではない。4月売上は前年同月比17.5%増を維持しており、同社は直近で通期売上見通しを引き上げ、AIチップ需要に対応するため設備投資を増やしている 。
したがって、現時点での読み筋は明確だ。4月の数字は、AI需要の赤信号ではなく、市場期待に対する黄信号である。次の判断は、5月と6月の月次売上、そしてTSMCがAI需要と利益率についてどのような説明を続けるかにかかっている 。