この訴訟は、2025年12月と2026年1月に英国高等法院で出された判断を受け、控訴審に持ち込まれていた。
控訴院は、ノキアがすでにFRAND義務を満たしていると判断した。その根拠は、ノキアが紛争解決の方法として拘束力のある国際仲裁(binding international arbitration)を提案していたことだ。
仲裁であれば、公正で合理的なライセンス条件を決定することが可能であるため、同じ問題を英国の裁判で改めて審理する必要はないと裁判所は結論づけた。
その結果、エイサーとASUSの訴訟は永久停止となった。これは単なる延期ではなく、大きな状況変化がない限り裁判が進まない状態を意味する。
この紛争はもともと、2026年6〜7月にロンドンで本格的な裁判が行われる予定だった。しかし控訴院の判断により、その審理自体が取り消された。
今後の解決のシナリオとしては、次のような展開が考えられる。
なお、公表されている報道では控訴院の判決文の詳細までは明らかになっておらず、仲裁の範囲など具体的な法的判断の全容はまだ十分には公開されていない。
この判断は、通信・電子機器業界で頻発する標準必須特許(SEP)ライセンス紛争の戦い方に影響を与える可能性がある。
まず、FRAND紛争において仲裁という解決手段の重要性が高まる可能性がある。特許保有者が拘束力のある仲裁を提案している場合、裁判所が世界ライセンス条件を設定する必要性は低いと見なされる可能性があるためだ。
また、英国裁判所に世界ライセンス条件の決定を求める実装企業側の訴訟戦略は、今後ハードルが上がる可能性もある。
もちろん、この判断は英国の裁判所の判断であり、他国の裁判所が同じ結論を採る義務はない。ただし、国際的なSEP交渉の力関係には一定の影響を与える可能性がある。
ノキアは通信機器だけでなく、Nokia Technologies部門を通じた特許ライセンス事業でも大きな収益を上げている。
同社は2026年に20億〜25億ユーロの比較可能営業利益を目標としており、ネットワークインフラ需要やAI・クラウド分野への拡張を成長ドライバーとして挙げている。
今回の判決がエイサーやASUSとのライセンス収入にどれほど直接影響するかは明確ではないが、SEPライセンス紛争で有利な立場を得たことで、将来のライセンス交渉における交渉力強化につながる可能性がある。
英国控訴院の判断により、エイサーとASUSが英国で進めていた対ノキア特許訴訟は事実上終了し、予定されていた裁判も中止となった。
裁判所は、拘束力ある国際仲裁を提示すること自体がFRAND義務を満たす可能性があるという立場を示した形だ。
通信・電子機器産業のように標準技術に依存する分野では、今後、国際仲裁がグローバル特許ライセンス紛争の主要な解決手段として存在感を高めるかが注目される。