SiemensがArmを支援しているポイントは、単なるシミュレーションではありません。Arm AGI CPUが実際のシリコンになる前、つまり設計データを製造工程へ渡す「テープアウト」前に、ハードウェア支援検証とプロトタイピングを使って、チップ全体の挙動をできるだけ現実に近い形で確認することです。
中心になるのは、SiemensのVeloce Strato CSエミュレーション・プラットフォームと、Veloce proFPGA CSプロトタイピング・プラットフォームです。狙いは、Arm AGI CPUをサブシステム単位からフルシステム単位まで検証し、性能、消費電力、レイテンシー、そしてソフトウェア準備のリスクを、シリコンができる前に減らすことにあります [1]。
何を検証しているのか
Siemensによると、ArmはVeloce Strato CSを使い、Arm AGI CPUを「サブシステムからフルシステムレベルまで」検証しました。ここで重視されたのは、ハイパースケール展開、つまり巨大クラウドや大規模データセンターで求められる性能、レイテンシー、電力要件を、テープアウト前に満たせるかどうかです [1]。
Armはまた、Siemensのハードウェア支援検証、エミュレーション、プロトタイピングのワークフローを使い、AGI CPUに使われるNeoverse VシリーズCompute Subsystemの主要な性能指標を検証しました [1]。
なぜ大規模なエミュレーションが必要なのか
今回の検証は小規模なものではありません。ArmのKarima Dridi氏は、Siemensが「複数タワーのVeloce Strato CS」を使い、Arm AGI CPUのフルシステム検証を大規模に可能にしたと述べています [1]。
Siemensがこの規模を必要とした理由として挙げているのは、設計そのものの複雑さです。Arm AGI CPUには、複雑なマルチダイCSSアーキテクチャ、Neoverse Vシリーズコア、高速インターコネクト、PCIe Gen6、NVMe、CXLといった要素が含まれます。Siemensは、こうした設計を従来型のEDAツールだけで十分なスケールと忠実度で検証するのは難しいと説明しています [1]。
ソフトウェア開発もシリコン完成を待たない
もう一つの柱が、Veloce proFPGA CSです。これはFPGAベースのプロトタイプを使い、実機に近い速度で検証を進めるための仕組みです。これにより、チームはシリコンが入手可能になる数カ月前から、ソフトウェア検証、ドライバー開発、システムの立ち上げ作業に着手できます [1]。
データセンター向けCPUでは、チップそのものの動作確認だけでなく、OS、ドライバー、ファームウェア、周辺機器との連携が早期に確認できるかどうかが重要になります。FPGAプロトタイピングは、その「待ち時間」を短縮するための手段です。
Arm AGI CPUの位置づけ
Arm AGI CPUは、Arm Neoverse CSS V3プラットフォームをベースにしたCPUで、agentic AI、つまり自律的にタスクを進めるAIワークロードや、クラウド・データセンターでの高性能かつ電力効率の高い計算処理を狙ったものです [1]。
要するに、SiemensはArmに対して、テープアウト前にハードウェアとソフトウェアの両面を大規模に確認するための検証インフラを提供しています。Veloce Strato CSでチップ全体の機能・性能・電力・レイテンシーを検証し、Veloce proFPGA CSでソフトウェア開発とシステム立ち上げを前倒しする。これによってArmは、ハイパースケールAIインフラ向けCPUを実シリコン投入前により確実に仕上げようとしている、という構図です [1]。






