結論から言えば、2026年のゲーム向けハードは「待てば安くなる」とは言いにくい年になりそうです。メモリと部品の価格上昇は、AMDのゲーム部門の売上を押し下げるだけでなく、PC向けGPU、ゲーミングPC、家庭用ゲーム機の価格や値引きにも波及する可能性があります。
AMDにとっては「小さいが痛い」ゲーム部門
AMDは2026年第1四半期に総売上高103億ドルを計上しました。一方で、ゲーム部門の売上高は約7億2,000万ドルで、前年同期比では11%増だったものの、前四半期比では15%減少しています[1][
6]。つまり、会社全体の数字は大きく伸びていても、ゲーム部門はすでに勢いが鈍り始めているという構図です。
さらに決算説明会をめぐる報道では、AMDは「メモリおよび部品コストの上昇」を理由に、2026年下期のゲーム売上高が上期比で20%超減少すると見込んでいるとされています[3][
9]。これは一時的な在庫調整というより、部品コストが製品価格と需要に直接効いてくる局面に入ったことを示しています。
AMDのゲーム部門には、PC向けのRadeon GPUだけでなく、ゲーム機向けのセミカスタム事業も含まれます。2026年第1四半期はRadeon GPU需要が前年同期比の増加を支えた一方、セミカスタム売上はコンソールサイクルの段階を反映して減少したと説明されています[10]。
値上げの震源は、GPUチップそのものだけではない
今回の圧力の中心は、GPUの演算チップだけではなく、周辺のメモリや部品です。AIインフラ向けのサーバー、アクセラレーター、高性能CPUの需要が強まるなか、メモリ供給をめぐる競争が激しくなっています。Sourceabilityは、DDR4、DDR5、NANDが2025年初め以降に複合的な値上がりを続け、一部では200%を超える上昇もあったとしています[13]。GPU向けのGDDR系メモリも、AI需要と高帯域メモリ需要の影響を受けるコスト要因として報じられています[
25]。
このため、GPUメーカーやボードパートナーは、上がったコストをすべて自社で吸収するのが難しくなります。報道では、Radeonを含むGPU価格の上昇や、AMD・NVIDIA系グラフィックスカードの値上がりが警戒されています[9][
16]。実際の店頭価格は地域、在庫、流通状況で変わりますが、2026年は値下げ競争よりもコスト転嫁が起きやすい環境です。
消費者市場への影響:高い、値引きが少ない、買い替えにくい
ゲーマーにとって最も分かりやすい影響は、ハードウェアの購入価格です。GPU単体では、ミドルレンジ以上のカードほどメモリ容量や高速メモリの比重が大きく、値上げ圧力を受けやすくなります。ゲーミングPCでは、GPUだけでなくRAMやSSD構成の価格も上がりやすく、メーカーは価格を上げるか、同じ価格帯で構成を抑えるかの判断を迫られます。
家庭用ゲーム機も例外ではありません。TrendForceは、メモリ価格の上昇が消費者向け電子機器のBOM、つまり部品表ベースの製造コストを押し上げ、ブランド各社の小売価格引き上げと需要鈍化につながっていると指摘しました。同社は2026年のゲーム機出荷見通しも、当初の前年比3.5%減から4.4%減へ下方修正しています[21]。別のTrendForce資料でも、ゲーム機メーカーがコスト上昇により値下げ戦略を取りにくくなり、高価格を維持して利益を守る方向に傾く可能性が示されています[
20]。
その結果、2026年の消費者向けゲーム市場では、販売台数の伸びよりも「買い替えの先送り」が目立つ可能性があります。新しいGPU、SSD増設、メモリ増量、ゲーム機本体の購入を検討している層ほど、価格上昇やセール縮小の影響を受けやすくなります。
ただし、AMD全体が弱いわけではない
重要なのは、これはAMD全体の失速という話ではないことです。AMDは2026年第1四半期について、AIインフラ需要が成長をけん引し、データセンターが売上と利益成長の主なドライバーになったと説明しています[2][
7]。つまり、会社全体ではAI・データセンター向けが強く、ゲーム部門の不振をある程度吸収できる構造です。
ただし、投資家や消費者が見ているポイントは違います。投資家にとっては、ゲーム部門が全社成長の足かせになるかどうか。消費者にとっては、Radeonや競合GPU、ゲーミングPC、家庭用ゲーム機がどれだけ高くなるかです。
2026年に見るべきポイント
今後の焦点は三つです。第一に、メモリ不足と価格上昇がどれだけ長引くか。第二に、AMD、NVIDIA、ボードメーカー、ゲーム機メーカーがコスト上昇をどこまで吸収し、どこから消費者価格に転嫁するか。第三に、年末商戦などの需要期に、高価格でも購入が戻るかどうかです。
現時点で最も妥当な見方は、AMDのゲーム売上には2026年後半に明確な下押し圧力がかかり、消費者市場ではGPUやゲーム機の値上がり、値引きの減少、販売台数の弱含みが起きやすい、というものです。AIブームはAMD全体の成長を支える一方で、ゲームユーザーにとっては部品コスト上昇という形で逆風になっています。





