これが最も重要な原動力である。STOXX 600構成企業の約54%が第2四半期決算を発表し、報告ベースの合計利益は約23% 増と、3月末時点でアナリストが予想していた11.5% のほぼ2倍に達している。売上高成長率も9.8% と、3ヵ月前に予想されていた4.3%を上回っている。第2四半期決算は全体で約20.8% の増益(エネルギーセクターを除くと10.3%)となる見込みだ。
この好パフォーマンスは意外なものだった。欧州企業の利益は2022年以来の最速ペースで成長しており、この地域の利益モメンタムの強さが、ストラテジストたちに目標株価の引き上げを促す重要な要因となっている。
上昇相場の号砲となったのは、6月の米イラン和平仮合意である。これによりホルムズ海峡が再開され、エネルギーコストを急騰させ、欧州の見通しを曇らせていた3ヵ月にわたる紛争に終止符が打たれた。STOXX 600が2026年初の最高値を記録したのは6月15日、この合意発表の日であり、広範な安心感から買いが戻った。その後、原油価格の下落が引き続きセンチメントを支え、中東情勢に対する根強い不安を和らげている。
テクノロジー株が指数上昇の主な原動力となっている。AI関連銘柄への世界的な需要は一連の最高値を牽引し、半導体やAIインフラ関連企業が今年の好パフォーマンスを主導している。欧州ハイテク株は7月31日、変動の大きい時期を経てAI関連株への需要が世界的に回復したことを受け、2.2%上昇した。半導体ウェハーやチップテスト装置などのメーカーが特に好調だ。
マクロ経済の背景も好転している。ユーロ圏のGDPは加速し、総合PMIは52を上回り、拡大を示している。成長の改善、地政学的な安定、エネルギー価格の低下が組み合わさり、株式にとって好ましい環境が生まれている。
機関投資家の間では、慎重な見方が徐々に強気へとシフトしているが、戦術面では顕著な違いが見られる。
UBSはメガバンクの中で最も積極的だ。同社のストラテジストはSTOXX 600の2026年末目標を630から690(7月中旬水準から約8%の上昇)に引き上げ、「慎重すぎた」ことを認めた。また、18ヵ月後の目標を760と設定し、現在の水準から約19%の上昇を示唆している。Gerry Fowler氏とSutanya Chedda氏が率いるチームは、目標修正の理由として「底堅い利益、AI関連のアナリストによる上方修正、銀行の利益見通し改善」を挙げている。UBSは7月、BofA、ドイツ銀行、Kepler Cheuvreuxなどとともに、目標株価を引き上げた銀行の一団を主導した。
BofAはより戦術的で、逆張りとも言えるアプローチを取っている。モメンタムの強いハイテクやAI取引を追うのではなく、ローテーションに備えている。BofAは、域内の成長が改善し、混雑したモメンタム取引が巻き戻されるにつれ、欧州小型株、通信、不動産、ドイツ株、ラグジュアリー株にさらなる上昇余地があると見ている。
BofAのマクロ予測によると、今後数ヵ月で欧州の小型株、通信、不動産はさらに約10% のアウトパフォームが見込まれる。また、同社は6月にモメンタム相場に対して慎重な見方を示し、欧州の高モメンタム株が低モメンタム株を年率40%もアウトパフォームしている(これは少なくとも20年ぶりの強さ)と警告し、投資家はディフェンシブ銘柄へのローテーションを始めるべきだと述べた。
ドイツ銀行のスタンスが最もニュアンスに富んでいる。欧州ソフトウェアセクターが1ヵ月で13% 上昇した後、同社のストラテジストは方向性のある「オーバーウエート」推奨を終了し、テクノロジーサブセクター全般で中立スタンスに変更した。Maximilian Uleer氏とJohannes Schaller氏は「Semi Convinced II」と題したリサーチノートで次のように記している。「明確な見解がない限り、セクターに対して中立を保つことが最も賢明な方法かもしれない」。今後の上昇は、主にロングオンリー投資家のエクスポージャー拡大にかかっていると指摘した。
ドイツ銀行は当初3月、AIによる破壊への懸念がピークに達したと判断し、ソフトウェア株が歴史的に低いバリュエーションプレミアムで取引されていることに着目し、ソフトウェア株をオーバーウエートに引き上げていた。この判断は的中し、ソフトウェア/半導体の等ウェイト戦略のシャープレシオは4.7と、半導体のみのアロケーションの3.8を上回った。しかし、急騰の後、短期的なリスクリワードは魅力的ではないと判断した。
もっとも、ドイツ銀行も他の銀行と同様、7月にSTOXX 600の目標株価を引き上げている。
ゴールドマン・サックスは、Ceres Power(水素燃料電池)やRheinmetall(防衛)などの特定銘柄に対して、3桁の上昇を見込んでいると報じられている。これは、エネルギー転換や欧州防衛支出における構造的な成長ストーリーへの確信を反映したものだ。ただし、この具体的な予想については、入手可能な情報源から独立して検証することはできなかった。
上昇を牽引するのと同じ力が脆弱性も生み出している。以下は、アナリストやロイターの報道で指摘されている主要リスクだ。
現在の欧州企業のセルサイド利益率予想は過去最高に達しており、失望の余地はほとんどない。エネルギー、人件費、原材料などによるコスト圧力や、価格決定力の低下があれば、業績予想の下方修正の波が起こるだろう。
株式リスクプレミアムが極度に圧縮されているため、市場にはリスクの再評価に対する緩衝材がほとんどなく、地政学的またはマクロ的なショックに対してバリュエーションが脆弱な状態にある。
米イランの仮合意によりホルムズ海峡は再開されたが、状況は依然として不安定だ。和平交渉が頓挫したり、敵対行為が再燃したりすれば、原油価格の追い風は逆転し、欧州株は大きな打撃を受けるだろう。
ハイテク大手による大規模な設備投資の発表は短期的に半導体銘柄を支えるが、AIインフラへの長期的な需要は依然として不確実である。ROIサイクルが期待外れに終われば、ハイテク主導の上昇相場はしぼむ可能性がある。ドイツ銀行もこの点を明確に指摘し、「長期的な需要見通しは依然としてかなりの不確実性に直面している」と述べている。
欧州銀行株は2026年の上昇相場の主要な原動力の一つである。もし債券利回りが低下して純金利マージンが圧縮されれば、銀行のアウトパフォーム取引は反転し、指数を支える主要な柱の一つが失われる可能性がある。
一部のストラテジストは、半導体セクターが行き過ぎていると指摘する。10%以上の調整があれば、ハイテク株やSTOXX 600全体を押し下げることになるだろう。BofAは6月、半導体、資本財、鉱業、銀行の4セクターを行き過ぎで非対称な downside risk を抱えるセクターとして特定した。
株式上昇相場の裏側で、信用ストレスが蓄積している。企業デフォルトが予想以上に急増すれば、銀行やハイイールドセクターに圧力がかかり、すでにひっ迫している市場にさらなるリスクが加わることになる。
ブルームバーグが7月に実施した調査によると、18人のストラテジストのコンセンサスは、STOXX 600が2026年末に平均647ポイントで終了するというものだ — これは調査時点の水準からかろうじて1%高いに過ぎない。この狭い平均値の背後には、UBSの690から、依然として下落を予想する弱気派の少数意見まで、大きなばらつきがある。上昇相場は確かに現実のものだが、その持続可能性を巡る議論は依然として活発に行われている。