この引き締め政策は、物価安定には不可欠かもしれないが、民間企業にとっては死活問題だ。通常の設備投資や事業拡大のための借り入れコストが非現実的なまでに高騰し、経済全体の投資活動が事実上ストップしている。
理論上、石油価格の高騰は財政に余裕をもたらす。事実、一時期はエネルギー関連の税収が、戦前の月平均の約3倍に跳ね上がった 。しかし、その「はずだった」特需は、膨れ上がる戦費と財政赤字の穴埋めに消えている。
2026年度のロシアの財政赤字は、早くもGDP比1.5%に達しており、石油・ガス収入は過去のピーク時と比べて約47%も急減した 。制裁により、余剰資金を使って欧米の先端技術や設備を調達する道も閉ざされている
。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、クレメンス・グラーフェは、次のようにこの状況を端的に表現した。
かろうじて維持されている経済成長の中身も問題だ。その大半は戦車や砲弾といった防衛生産と、国営企業による周辺産業に集中している。
こうした「軍事ケインズ主義」的な成長は、民間経済全体への波及効果が極めて弱く、本質的に持続不可能だ。戦時支出の伸びが止まるか、減少に転じたとたん、GDPを下支えしていた人工的な需要が消え、実体経済の停滞がむき出しになる 。
ロシアには石油というドル箱がある。しかし、その現金を実際の経済成長に変換するための「実物資源」が決定的に不足している。
問題は需要や資金不足ではない。必要なのは、働く人、動く工場、そして最先端の技術だ。そして、これらはすべて供給サイドの制約であり、石油収入がいくら増えても解決できない壁である。
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