債券利回りが上がると、将来の利益を現在価値に換算する際の割引率も高まり、株価には下押し圧力がかかります。それでもモルガン・スタンレーが世界株を債券より相対的に選好するのは、今回の利回り上昇が景気の崩れではなく、底堅い名目成長を映しているとみているためです。企業業績の伸びが続けば、株価評価への重荷を補える可能性があります。
32
利回り上昇と株高は両立するのか
株式の評価には、将来得られる利益を現在の価値に割り引く考え方が使われます。そのため、金利や債券利回りが上がれば、一般に株式の評価額には逆風です。一方、景気が堅調で企業の売上高や利益が伸びるなら、利益成長がその逆風を和らげることがあります。
モルガン・スタンレーの見立ては、強い経済成長と企業収益が続けば、利回りが高い水準にあってもリスク資産の上昇基調が再び勢いを取り戻し得る、というものです。
32
AIによる生産性向上も、株式を支える可能性のある要素として挙げられています。生産性が高まれば、企業は同じ資源でより多くの成果を上げられる可能性があります。ただし、こうした効果がどの程度広く、どれほど大きく実現するかは確定していません。
32
債券売りは「インフレ再燃」だけを意味しない
モルガン・スタンレーのグローバル投資委員会は、利回り上昇の背景をインフレ懸念だけで説明するのではなく、景気の強さ、借り入れの増加、債券需要の変化を挙げています。
17 つまり、市場がより高い利回りを求めている理由は、インフレの加速予想だけでなく、成長や債券市場の需給にもあるという解釈です。
もっとも、利回りの上昇は債券投資家にとって機会にもなります。モルガン・スタンレーは、現在の利回りが魅力的な収入につながり得るほか、予想どおり利回りが低下すれば、信用力の高い債券は価格上昇も期待できるとしています。
17 株式か債券かを一方だけ選ぶというより、それぞれの条件や投資期間を見極める考え方です。
ゴールドマン・サックスも、期間を分けて株と債券を評価
ゴールドマン・サックスも株式に前向きな見方を示し、株価評価の低下を受けて、今後3カ月の株式を「オーバーウェイト」としました。企業業績への期待もその背景にあります。一方、同社は今後12カ月の債券も「オーバーウェイト」に引き上げています。
33
36
オーバーウェイトとは、比較対象となる基準より資産配分を多くする判断です。投資期間が異なれば、株式を短期で相対的に選好しつつ、より長い期間では債券にも期待することは両立します。どちらか一方が、あらゆる価格や状況で有利という意味ではありません。
エネルギーコストの上昇は、強気シナリオを揺るがす可能性
モルガン・スタンレーは別の分析で、世界的なディーゼル供給の逼迫と歴史的な高値、製油所の処理能力の制約を指摘しています。
5 ディーゼルなどの精製燃料が長く不足すれば、輸送や生産にかかる費用が増える可能性があります。そうした負担が広がれば、家計の購買力や企業の利益率を圧迫し、株式を支える前提である業績の底堅さを損ないかねません。
これは、エネルギーショックが必ず市場を崩すという予測ではありません。重要なのは、株式への強気姿勢が条件付きだという点です。景気と利益が持ちこたえれば株式には追い風が期待できますが、エネルギー価格の上昇が長引いてコスト圧力が強まれば、その見通しは難しくなります。
要点:利回りの水準だけでなく、上昇の理由を見る
モルガン・スタンレーの株式選好は、利回り上昇が何を示しているか、そして今後も企業利益が伸びるかにかかっています。利回りが景気の底堅さを反映し、利益成長が続くなら、株式は評価面の逆風に耐えられる可能性があります。一方、エネルギー供給の混乱が景気を弱めたり、企業コストを押し上げたりすれば、強気の根拠は薄れます。信用力の高い債券についても、収入と利回り低下時の価格上昇という機会が残ると同社はみています。
17
32