AIを使えば、社員が一つの作業を短時間で終えられることはあります。しかし、その時間短縮が会社のコスト削減や売上増、利益の改善に結びつくとは限りません。
その違いを示すのが、マッキンゼーの2026年調査です。回答者の80%は、AIによって自分の生産性が向上したと答えました。一方、AIが利払前・税引前利益(EBIT)に少なくとも何らかの影響を与えたとする回答は37%。調査で「高パフォーマー」とされたのは約6%で、AIがEBITの5%以上に貢献し、その影響が「大きい」と回答した層です。これらは回答者による評価であり、特定の取り組みが利益を生むと因果関係を証明するものではありません。
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生産性が上がっても、利益に表れない理由
個々の作業が速くなっても、その前後にある承認や引き継ぎ、システム、意思決定の仕組みが変わらなければ、節約した時間がコスト削減や売上増につながらないことがあります。
マッキンゼーの2026年調査では、AIの成果が大きい企業ほど業務フローを見直す傾向が示されています。また、同社の以前の調査では、検証対象となった要素のうち、業務フローの再設計がEBITへの影響と最も強く関連していました。ただし、これは関連性を示すもので、再設計だけで利益が生まれると証明したものではありません。
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効果の測り方にも注意が必要です。ツールの導入数や利用頻度、短縮できた時間は、AIが使われていることを示します。しかし、それだけでは会社の収入が増えたのか、支出が減ったのかは分かりません。個人の生産性向上とEBITへの貢献に大きな差があるという調査結果は、両方を分けて確認する必要性を示しています。
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AIを試験導入から事業成果につなげるには
まず、測定できる事業目標を決める
誰が責任を持つのかを明確にしたうえで、解決したい課題と検証する成果を定めます。たとえば、サービス業務のコスト削減や、購入につながる割合の改善などが考えられます。目標はAIの利用件数を増やすことではなく、事業上の課題に沿ったものにしましょう。取り組みを始める前に現状値を記録しておけば、変更後の結果と比較できます。
最初は評価しやすい範囲に絞ることも大切です。対象となる業務と成果を明確にしておけば、AIが役立つ場面、人の確認が必要な場面、取り組みを広げる価値があるかを見極めやすくなります。
データの質と管理責任を整える
DMEXCO 2026の商取引関連セッションでは、仕入先の商品データがさまざまな形式で届き、項目名にばらつきがあったり、情報が欠けていたりする課題が紹介されました。共通の基準がなければ、こうした問題がシステム間で引き継がれ、手作業での修正が必要になります。
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データの品質、事業成果、AIの出力をいつ誰が確認するかについて、責任者を明確にしましょう。商取引では、AIアシスタントやSNS、マーケットプレイスなどに商品発見の接点が広がるなか、商品情報を正確で一貫した状態に保つことも重要です。価格が関わる場合は、その情報の正確さも求められます。
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作業だけでなく、業務の流れを見直す
業務に入ってくる情報、AIに任せる作業、承認が必要な箇所、結果を受けて行動する人まで、プロセス全体を確認します。不要な引き継ぎがあれば適切に減らす一方、判断や例外対応、事業リスクを伴う決定については、人が責任を持つ体制を維持します。
これは既存の業務にツールを追加するだけでなく、仕事の進め方そのものを設計し直すことです。マッキンゼーの調査では、業務フローの再設計と、より大きな財務効果との関連が示されています。ただし、2026年調査が再設計だけで利益が生まれると立証しているわけではありません。
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事業の数字で効果を測る
導入や利用の件数、処理量、作業時間の短縮だけでなく、売上、コスト、利益率、EBITに変化があったかを追いましょう。評価には導入費用や人による確認のコストも含め、事前に設定した基準値と比べます。生産性の向上が会社の財務成果に届いたかを確かめるための実務的な方法です。
大切なのは、導入数より仕事の変化
調査結果は、AIで利益を上げるための確実な処方箋を示すものではありません。ただ、成功を導入や生産性だけで測るには限界があることは明らかです。回答者の多くが個人の生産性向上を挙げた一方で、EBITへの貢献を挙げた割合はそれより低くとどまりました。
企業ができるのは、目的を絞った活用、信頼できるデータ、明確な責任体制、業務フローの見直し、財務面での効果測定を組み合わせることです。そして、リーダーシップや判断が必要な場面では、人が責任を担う必要があります。
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