米国債利回りの上昇を受け、新興国(EM)債の投資家は、ドル建て債よりも現地通貨建ての国債を相対的に選好している。
背景にあるのは「新興国なら何でも買い」という見方ではない。米国債との比較でドル建て債のうまみが薄れる一方、選別された現地市場には、より魅力的な価格水準とキャリー(利回り収入)を得る余地がある、という相対価値の判断だ。ただし、その対価として投資家は現地通貨の為替リスクを直接負う。
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米国債利回りの上昇がドル建て債に逆風となる仕組み
9月19日時点で米10年国債利回りは5.00%だった。
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ドル建ての新興国国債は、一般に「米国債利回り+信用スプレッド」で評価される。米国債利回りが上がれば、信用リスク、流動性リスク、政治リスクが相対的に小さい米国債でも高い利回りを確保できるようになる。投資家が新興国債を保有するには、従来以上の上乗せ収益を求めることになり、スプレッドが十分に縮小しなければ債券価格には下押し圧力がかかる。
こうした環境で、外貨建て、すなわちドル建ての新興国債は、国内通貨建て債より見劣りしやすくなっている。
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現地通貨建て債のリターンは「キャリー・金利・為替」で決まる
ドルを基準に考えた場合、現地通貨建て債のリターンは主に3つの要素で動く。
- キャリー:現地市場で受け取るクーポンや利回り収入
- 現地金利の変化:利回り低下は通常、債券価格の上昇につながり、利回り上昇は価格の下落要因となる
- 為替:現地通貨が対ドルで上昇・下落することによる換算リターンの変化
とりわけ注目されるのがキャリーだ。低利回り通貨で資金を調達し、より高い利回りの資産に投じることで収益を狙うキャリー取引の機会が、割安感と並んで現地通貨建て債を選ぶ主な理由とされる。
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ジェネラリも8月の市場見通しで、バリュエーションを理由に新興国の外貨建て債より現地通貨建て債を選好し、現地金利にはより大きな価値があると指摘した。
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実績にも表れた選好の変化
この選好は相対的なパフォーマンスに表れている。ブルームバーグの国内通貨建て新興国債指標は、6月末から9月の報道時点までに、ドル建て新興国債の指数を3ポイント超上回った。
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投資家のポジションも現地通貨建て債に傾いた。バンク・オブ・アメリカが9月4日から9日にかけて実施した調査では、運用総額合計4,440億ドルの世界の債券運用担当者38人のうち、**84%**がドル建て債に比べて現地通貨建て新興国債をオーバーウェイトとしていた。8月の38%から大きく上昇した。
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もっとも、ポジションの集中は相場観の強さを示す半面、前提が崩れた際の反動も大きくする。急速なドル高や世界的なリスク回避が起きれば、為替と現地金利の両方を見直す動きが同時に強まる可能性がある。
最大の弱点は為替損失
現地通貨建て債とドル建て債の決定的な違いは、為替エクスポージャーにある。
現地債がクーポンを生み、現地市場で価格上昇したとしても、現地通貨が対ドルで大きく下落すれば、ドル建て投資家のリターンは損失になり得る。市場では、現地通貨建て新興国債の主なパフォーマンス要因として、バリュエーション、ドル相場の見通し、新興国中央銀行の金融政策見通しが挙げられている。また、世界的な為替不確実性の高まりによって、現地通貨建て債のスプレッドが拡大したとの指摘もある。
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ドル高は特に厄介だ。為替下落によってキャリー収益を削り、場合によっては相殺してしまうほか、現地通貨建て債への資金配分そのものを後退させる可能性がある。
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この取引を崩し得るほかの要因
世界・現地の金利高止まり
米金利が高い状態を維持すれば、世界の資金調達環境は厳しいままとなり得る。現地の利回りまで上昇すれば債券価格は下落する。投資家は債券価格の下落と通貨安という二重の打撃に直面しかねない。
利下げ余地の縮小
現地通貨建て債の魅力の一部は、新興国の中央銀行が利下げを行い、既発債の価格を押し上げるとの期待にある。しかし、インフレ、財政懸念、通貨安は利下げ余地を狭める。BNPパリバは、新興国中銀の利下げの可能性を重要な要因に挙げており、確実なシナリオとはみていない。
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地政学リスクとリスクオフ
地政学的な不確実性は、投資家をドル資産へ向かわせ、よりリスクの高い市場から遠ざけることがある。ジェネラリは新興国ソブリン債が地政学的緊張に対して底堅さを保っているとしたが、投資家心理が急変するリスクまでなくなるわけではない。
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結論:魅力はあるが、為替次第の側面が強い
現地通貨建て新興国債が選好されるのは、米国債利回りの上昇でドル建て新興国債の相対的な投資妙味が下がる一方、現地市場にはキャリーと、場合によってはより魅力的なバリュエーションがあるためだ。この組み合わせがドル建て債を上回る実績につながり、機関投資家の明確なオーバーウェイトを呼び込んだ。
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ただし、このリターンは条件付きである。現地通貨建て債には金利変動リスクと国の信用リスクに加え、為替リスクがある。ドル高、金利の高止まり、地政学的ショックが起きれば、魅力の源泉だったキャリーを短期間で上回る損失につながる可能性がある。
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