これらはGPD、ASUS、Lenovoなどのメーカーが2024年から2026年にかけて投入した最新の携帯ゲーミングPCや高性能モバイルノートPCの“心臓部”として広く採用されている。特にRadeon 890Mは、その性能がエントリークラスの単体GPUに迫るとのベンチマーク結果もあり、パワー効率の面からも高く評価されてきた 。
今回のAMDの発表が特に不可解なのは、「旧型の方が優遇される」というアーキテクチャ上のねじれを生んでいる点だ。
一方で、RDNA 3とRDNA 4の“間に位置する”アーキテクチャ最適化版であるRDNA 3.5は、AIアップスケーリングの正式サポートから取り残されてしまった。これはつまり、RDNA 3.5を搭載する最新ゲーム機が、一世代前のRDNA 2チップを積んだSteam Deckよりも、画質向上とパフォーマンス維持の両立に劣る可能性があることを意味する。
この除外は、携帯ゲーム機市場に対するAMDの長期的なコミットメントに疑問符を突きつけるものだ。携帯ゲーム機は消費電力と排熱に厳しい制約があるため、高解像度でのネイティブレンダリングは難しい。AIによる超解像技術は、低い内部解像度からシャープで高品質な映像を生成するため、まさにこのようなデバイスでこそ真価を発揮する 。
AMD自身もこれを認めている。David McAfee氏はCES 2026のラウンドテーブルで、フレーム生成や超解像技術は、デスクトップ向け単体GPUよりも消費電力やコストの制限が厳しい携帯機にとって「より大きな価値がある」と述べていた 。しかしながら、現状のロードマップでは、モバイル向けのRDNA 4 APUは発表されておらず、携帯ゲーム機市場に出回っている最新アーキテクチャはRDNA 3.5のままだ
。Computex 2026でMcAfee氏は将来のモバイルAPUへのRDNA 4統合を示唆しつつも、具体的な製品発表は時期尚早とした
。高性能を期待してStrix PointやKrackan Point搭載機に投資したユーザーにとって、この不透明感は大きな不安材料である。
RDNA 3.5の除外は、FSR 4の展開が当初から分断を伴ってきた流れの延長線上にある。FSR 4は、当初FSR Redstoneスイートの一部として2025年12月に登場した際、RDNA 4ベースのRadeon RX 9000シリーズ専用だった 。コミュニティからの強い反発と、非公式MODによる実証を経て、AMDは2026年5月に方針を転換し、FSR 4.1として旧世代へのバックポートを発表した
。
しかし、その「寛容策」にもかかわらず、以下のような厳しい制限が残っている。
その上で、今回のRDNA 3.5内蔵GPUの「サポート対象外」が追い打ちをかけている。
AMDは、RDNA 3.5への将来的なFSR 4.1サポートの可能性を完全に否定しているわけではない。「当面予定はない」との公式見解は、将来的な需要や技術的実現可能性がそろえば覆る可能性を残している 。実際、RDNA 3.5とRDNA 3の技術的な差は比較的小さく、アーキテクチャの世代間というよりは、製品のセグメント分けや開発リソース配分の結果である可能性が高い
。
とはいえ、現在RDNA 3.5搭載の携帯ゲーム機を所有しているユーザーは、過度な期待を抱くべきではない。当面の間、これらのデバイスはFSR 3.1ベースのアップスケーリングに甘んじる可能性が高い。状況が動くとしても、それはRDNA 3やRDNA 2への展開が完了し、コミュニティからの再び強い要望が高まった後のことになるだろう。日本のユーザーとしても、今後の情報とコミュニティの動向に注視していく必要がある。
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