ただし、autorun=1だけで攻撃の全体が完成するわけではありませんでした。通常のクエリ機能や、Copilotが利用できる外部データへのアクセス機能と組み合わさることで、実用的な攻撃チェーンになりました。
Copilotには、認証済みセッションでページを読み込んだ際に、プロンプトを自動実行させられる未公開のautorun=1パラメーターが存在していました。
攻撃者は、Copilotのクエリパラメーターq=とautorun=1を組み合わせ、悪意あるプロンプトを埋め込んだリンクを作成できます。被害者がそのリンクを開くと、明確な追加承認を求められることなく、リンク内のプロンプトが実行される可能性がありました。
これは、ユーザーが自分で開始した会話に悪意ある指示が入り込むのではなく、メールやWebページなど外部から届けられたリンクを起点に、被害者の既存セッションでAIが攻撃者のテキストを処理してしまう点に意味があります。
実証された攻撃チェーンでは、注入されたプロンプトによって、被害者がCopilotに許可していた接続サービスから情報を取得し、その内容をエンコードして、CopilotのURL取得機能を通じて攻撃者の管理するエンドポイントへ送信できる可能性がありました。
つまり、CoSnitchは単なるプロンプトインジェクションではありません。次の要素が組み合わさっていました。
CoSnitchは、接続先のサービスへ直接侵入する攻撃ではありません。被害者のCopilotセッションにすでに与えられていた権限を利用するため、実際にアクセスできる範囲は、アカウントに接続・許可されていたサービスによって変わります。
報告された例には、次のような情報やサービスが含まれます。
この点は、リスクを判断するうえで重要です。接続サービスが少ないユーザーと、個人情報や組織内データを横断的に検索できる状態のユーザーでは、攻撃によって到達し得るデータの範囲が異なります。AIアシスタントにどの権限を与えていたかが、被害の大きさを左右します。
VaronisはCoSnitchをCVE-2026-24301として特定し、深刻度を「Critical」としました。一方、「Critical」という分類だけから特定のCVSSスコアを推測することはできません。今回提示された資料には、CoSnitchの数値によるCVSS評価を裏付ける情報がありません。
一部の資料は2026年2月に先行する緩和策が実施されたとしていますが、その対応が攻撃チェーンのどの部分を対象にしたのか、また8月の修正と技術的にどう異なるのかは、提示された証拠だけでは確定できません。
Varonisは、CoSnitchが実際の攻撃に使われた証拠は確認していないとしています。また、提示された資料からは、CVE-2026-24301が米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャー安全保障庁(CISA)の「Known Exploited Vulnerabilities Catalog(既知の悪用済み脆弱性カタログ)」に掲載されたことも確認できません。
これは、確認済みの実害や実環境での悪用が資料上で示されていないという意味であり、悪用が一度も起きていないことの証明ではありません。
提示された研究の中心は、Microsoft Copilot Personalです。Copilot Personalを使っているユーザーが、企業のサービスに認証済みだったり、組織のデータへ接続できる状態だったりすれば、攻撃の影響が企業関連情報に及ぶ可能性はあります。
ただし、これはMicrosoft 365 Copilot Enterpriseそのものに同一の脆弱性が存在したと証明することとは別です。提示された資料の一つはこの区別を明確にしている一方、別の二次報道は企業向け環境へのより広い影響を主張しています。現時点で、提供された証拠だけからこの食い違いを解消することはできません。
慎重な結論として、組織は接続アカウントの権限とアップデート状況を確認すべきです。しかし、CoSnitchの研究を根拠に、Microsoft 365 Copilot Enterpriseも同じ脆弱性の影響を受けたと断定するのは適切ではありません。
CoSnitchは、AIアシスタントがユーザーに許可された情報を扱い、場合によってはその情報に基づいて行動することのリスクを調べてきた、Varonis Threat Labsの一連の研究に位置付けられます。
CoSnitchの特徴は、攻撃者がコンテンツに悪意ある指示を埋め込んだだけではなく、Copilot自身に「なぜ自動実行できないのか」を説明させることで、その仕組みを可能にする未公開の機能を見つけた点です。