試合はロスタイム深くまで膠着状態が続きました。しかし、ウィルフリード・シンゴが右サイドを突破し、正確な低いクロスを送ります。これに後半から投入されたばかりの23歳のアマド・ディアロが反応。ペナルティエリア手前で冷静にトラップし、ファーストタッチでゴール左下隅に流し込みました。これが彼のW杯初ゴールとなり、瞬く間に今大会最初のハイライトの一つとなりました 。コートジボワールのベンチとスタンドに駆けつけたサポーターは熱狂の渦に包まれました。
一方のエクアドルにとって、この敗戦はあまりに苦いものでした。セバスティアン・ベカセセ監督は試合後の会見で、この結果を「不当だ」と率直に表現しました 。
「悔しい。不当な敗北だ。チームが素晴らしいパフォーマンスを見せ、最も明確なチャンスを作り出したことを示す強力な論拠がある。勝利できたはずなのに、終盤の一つのディテールで何も得られずに去ることになった」
彼のフラストレーションはもっともなものでした。チームは試合の大半で主導権を握りながら、皮肉にもゴールポストに阻まれ続けました。ジョン・イェボアとアラン・ミンダが前半に立て続けにクロスバーを直撃。エクアドルはこの試合で計3回も枠を叩く不運に見舞われました。この試合のエクアドルの期待ゴール数(xG)は1.01。1966年以降、W杯の1試合で3回ポストを叩きながら敗れたのは、史上4チーム目という不名誉な記録です 。
エクアドルが運のなさを嘆く中、コートジボワールのエメルス・ファエ監督は、自身の挑戦的なプロジェクトを証明する勝利を祝いました。彼の若いチームには国際キャップ数が20に満たない選手も何人かおり、ウィリアン・パチョ、ピエロ・インカピエ、モイセス・カイセドらを擁する経験豊富なエクアドル守備陣に挑みました 。ファエ監督は前半は内容的に劣っていたと認めつつも、チームの粘り強さと後半の戦術的な修正を称賛しました 。
「我々は野心と高い期待を持ってここに来ている。早々に帰るつもりはない」と同監督は語り、チームの真剣な意気込みを示しました 。そして、ディアロの決勝ゴールに象徴されるベンチメンバーのエネルギーと質が勝敗を分けたと、ベンチワークを特に称賛しました 。
土壇場での決勝ゴールだけでなく、この試合は新たな世界的才能の誕生を告げるものでもありました。19歳のウインガー、ヤン・ディオマンデが公式のマン・オブ・ザ・マッチに選出。恐れを知らないパフォーマンスでエクアドル守備陣を再三にわたって苦しめました 。RBライプツィヒに所属し、昨季のブンデスリーガ新人王でもある彼は、チームの最初のビッグチャンスも創出。そのパスからエリー・ワヒが放ったシュートもクロスバーを叩いています 。CBSスポーツは彼を「この試合のブレイクアウトスター」と称賛。ファエ監督も「彼はインパクトのある選手だ。対戦相手にとっては手が付けられない。彼が我々の期待に応えてくれることを証明した」と語っています 。
この結果は、両国にとって計り知れない歴史的意味を持ちました。コートジボワールの勝利は、2014年の日本戦以来となるW杯での白星です 。2018年と2022年の大会出場を逃していた彼らにとって、W杯の大舞台への復帰を飾る大きな声明であり、W杯の舞台で南米のチームから挙げた初勝利でもありました 。
一方のエクアドルは、2024年9月のブラジル戦以来続いた驚異の19戦無敗記録が、痛烈な形でストップしました 。史上最強とも評された布陣でアメリカ入りした『ラ・トリ』は、決勝トーナメント進出へ向けて、早くも苦しい立場に立たされることになりました 。
この劇的な結果は激戦が予想されるグループEの構図を一気に変えました。同日のもう一試合でドイツがキュラソーを7-1で圧倒したこともあり、グループの序列は早くも緊迫した様相を呈しています 。
この一戦で、コートジボワールは彼らの野心が本物であると証明しました。そしてエクアドルは、W杯において「支配してもゴールがなければ意味がない」という残酷な教訓を、痛いほど思い知らされたのです。