重圧がのしかかる中、キッカーを任されたのはバロンドール受賞者のウスマン・デンベレ。フランス代表FWはGKダビド・ラヤの動きを完全に見切り、ボールを冷静にゴール左下隅へと流し込んで同点に追いつき、連覇を目指す王者に再び息吹を吹き込んだ 。
試合最大の転機となったのは、延長前半のワンシーンだった。アーセナルの途中出場、ノニ・マドゥエケがPSGのボックス内にドリブルで侵入し、DFヌノ・メンデスのチャレンジを受けてピッチに倒れ込んだのだ。アーセナルの選手、ベンチ、そしてサポーターは、これが明確なファウルだと確信し、激しくPKをアピールした 。
しかし、湧き上がる歓声をかき消したのは、ドイツ人主審ダニエル・ジーベルトがプレーオンを強調する身振りだった。抗議が激しさを増し、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によるチェックも行われたが、フィールド上の判定は覆らなかった。この判定への不満は爆発し、アルテタ監督とMFデクラン・ライスが激しい抗議によってイエローカードを提示される事態にまで発展した 。
マドゥエケのシーンだけが唯一の議論の的だったわけではない。試合前半には、クロスボールがアーセナルのブカヨ・サカの腕に当たったとして、PSGにももっともなPKのアピールがあったが、ジーベルト主審は一度サカの足に当たってから腕にディフレクトしたと判断し、笛を吹かなかったのだ 。紙一重の展開となったこの試合では、両チームとも、自分たちに有利な笛が吹かれなかった決定的な瞬間を指摘できるだろう。
アーセナルの2人目のキッカー、エベレチ・エゼは、助走のスタッターステップが裏目に出て、シュートはゴールの枠を大きく外れてしまう。しかし、直後にGKラヤがPSGのヌノ・メンデスのキックをセーブし、アーセナルに再び息を吹き返すライフラインがもたらされた 。4人ずつが蹴り終えて3-3。優勝杯の行方は、センターバックの肩に委ねられることとなった。
アーセナルのDFガブリエウ・マガリャンイスは、この試合を通して超人的なパフォーマンスを見せていた。その彼が、命運を分ける5人目のキッカーとして歩みを進める。しかし、想像を絶するプレッシャーは耐えがたいものだった。彼の放ったシュートはクロスバーの遥か上空へと舞い上がり、PSGに4-3のPK戦勝利、そしてパリの選手たちとサポーターの狂喜乱舞をもたらしたのである 。
打ちひしがれたアルテタ監督は、試合直後、自らの感情を包み隠さなかった。その心境を問われたアーセナル指揮官の答えは、率直で、そして痛切だった。「痛み、それだけだ。決勝まで一貫して戦い抜き、最後にはPK戦でタイトルを逃すというのは、受け入れるのが非常に難しい」 。
彼はマドゥエケのインシデントにすぐさま言及し、自軍がPKを得られた可能性は「十分に」あったと主張。今大会で目撃してきた判定の一貫性のなさを指摘した 。また未来を見据え、アルテタ監督は、挑戦者から真の王者へと至るための最後のギャップを埋めるべく、アーセナルの首脳陣にこの夏の移籍市場で「非常に野心的」になるよう奮起を促した
。
中盤で圧倒的な存在感を示し、PK判定への抗議でイエローカードを受けていたデクラン・ライスもまた、自らの言葉を発した。彼はPKが与えられなかった判定を「受け入れるには難しい判断だった」と述べ、アーセナルが試合の大部分を支配していたと感じており、延長戦で勝利を決めるチャンスを不当に奪われたとの見解を示した 。
感情の分水嶺を隔てた反対側では、PSGの勝利は一つのレガシーが揺るぎないものとなった瞬間として位置づけられた。監督として自身3度目のCL制覇を果たしたルイス・エンリケは、悪夢のような立ち上がりから立ち直ったチームの回復力と、PK戦での冷徹なまでの落ち着きを称賛した 。
2年連続でトロフィーを掲げた主将マルキーニョスは、現行のチャンピオンズリーグの歴史において、2016年から2018年にかけてのレアル・マドリード王朝だけが成し得た偉業に、自クラブが並んだことを祝した 。
MFデジレ・ドゥエは、チームの深い結束と、コーチングスタッフが極限状態で与えてくれた落ち着きこそが、勝利の鍵だったと語った 。DFイリヤ・ザバルニーも、試合開始早々に失点しながらもチームが保ち続けた信念こそが、逆転劇の基盤だったと指摘している
。
最終的に、2026年の決勝戦は、PSGによる新たな世界秩序の到来を高らかに宣言した勝利の瞬間であると同時に、アーセナルにとっては胸が張り裂けるような「もしも」の物語として記憶されるだろう。この結果、パリ・サンジェルマンは、1992年に現行の大会名に改称されて以来、チャンピオンズリーグのタイトルを連覇した史上2番目のクラブとして、レアル・マドリードに名を連ねることとなった 。アーセナルにとっては、初の欧州王座まであと一蹴りというところまで迫った末の痛恨。この傷跡は、未来の栄光によってのみ癒されるものだ。
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