インテーザからの提案に、解釈の余地はほぼない。MPSの全普通株式に対する、株主への直接的なメッセージだ。
インテーザが「お得意様」を引き寄せるために用意したプレミアム(上乗せ幅)は相当に厚い。
インテーザのCEO、カルロ・メッシーナは声明で、この提案を「友好的」と表現し、年内の取引完了時までに株主の支持を確実に取り付けられるとの自信を示した 。もっとも、本TOBが成立するためには、欧州委員会による厳しい独占禁止法(競争法)審査のクリアが絶対条件となる
。
この動きの戦略的必然性は、そのタイミングにこそある。すでに述べたように、バンコBPMが提案したのは単なる合併話ではない。その真の狙いは、水面下で噂された「インテーザ連合」によるMPS解体・分割買収への先制的な防御策だった可能性が、複数の関係者によって指摘されている 。
インテーザが翌朝に仕掛けた電撃的なTOBは、「紳士的な経営統合協議」というプロセスをきれいさっぱり迂回した。
取締役会の密室での談合ではない。MPSの株主に対し、「今ここで、この現金と株式に応じるか?」という、期限付きの熱い問いを直接突きつけることで、アナリストが「潜在的買収合戦」と呼ぶ舞台を一気に用意したのだ 。
イタリアのトップバンク同士が統合すれば、当然ながら、欧州委員会からの厳しい競争法上の懸念が噴出する。インテーザはこの問題を事前に「解決」するため、極めて入り組んだ、法的拘束力のある確約で以て臨んだ。
これはまさに、欧州競争法への「回答」として用意周到に練られた二段構えの解決策だ。市場の競争環境を維持するという大義名分のもと、インテーザは「喉から手が出るほど欲しかった」メディオバンカという資産だけを巧みに選別し、手中に収めることが可能となる 。
さらに事態を複雑かつ戦略的にするもう一つの層がある。インテーザの取締役会はTOB決議と同時に、イタリア最大の保険会社、アッシクラツィオーニ・ゼネラリの株式3.01%を取得することを別途承認し、同時にヘッジ目的のデリバティブ契約も結んだ 。
これは一体何を意味するのか? CEOのメッシーナがアナリスト説明会で語ったところによると、その目的は極めて戦術的で、次の二つに尽きる。
インテーザにとって、この買収の意義は「規模」と「決着」の二語に集約される。統合が実現すれば、総資産でユーロ圏第2位の銀行グループが誕生する 。これは単に預金と支店網を積み上げるだけの話ではない。イタリア国内銀行業界において、「誰がリーダーか」という長年の曖昧さに終止符を打つ決定的な一撃なのである。
今後、事態は企業統治の手続きと規制当局の審査という、明確なレールの上を進むことになる。
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