皮肉なことに、2026年の香港IPO市場で最も素晴らしいパフォーマンスを上げていたのが、MiniMaxとZhipuという二つのAI企業だった。しかし、彼らは1月に上場したばかりで、指数組み入れのための最低上場期間という技術的な要件を満たしておらず、指数の外で独り勝ちしている状態だったのだ 。
この「空白期間」の機会損失は、数字で語られていた。モルガン・スタンレーが2026年4月のリポートで発表した試算によると、もしMiniMaxとZhipuがIPO時に科技指数に組み入れられていたならば、同指数の年初来リターンは約5パーセントポイント押し上げられていたという 。パッシブ運用のETFなどを通じて指数に連動する投資家にとっては、まさに「幻の上昇」だった。
「指数にさえ入れば株価は上がる」というわけではない。6月8日の初日が証明したのは、むしろその逆だ。明暗を分けた要因を見てみよう。
今後に目を向けると、待望のパッシブ資金流入だけが続くわけではないという点も、アナリストは注意喚起している。まさに指数連動ファンドが機械的に買いを入れなければならないタイミングで、IPO前から株式を保有する内部関係者やベンチャーキャピタルのロックアップ(売却制限)期間が順次解除され始めるからだ 。
「必ず買わなければならない資金」と「そろそろ売りたい株主」が同時に市場に現れる。これは今後数カ月にわたり、極めて複雑な需給環境を生み出すリスク要因となる。
初日の値動きこそ厳しいものだったが、ハンセン科技指数にとってこれは構成銘柄の「DNA書き換え」とも言える歴史的瞬間である。長年、同指数は成熟した中国の消費者経済に依存する巨大インターネット・プラットフォーマーに支配されてきた。そのベンチマークに、次なる生産性革命の「つるはしとシャベル」を売る企業が正式に加わったのだ 。
初日の2.7%という指数下落は、一見すると不吉な船出に見える。しかし、より深い物語は、AIがアジアの公募市場において持続可能なカテゴリーとしてついに「お墨付き」を得たことだ。市場が今、見極めようとしているのは、モルガン・スタンレーの予測した巨額パッシブ資金が、真の「優良銘柄」としての下値を支える「フロア」となるのか。それとも、グローバル金利の動向だけが唯一の支配的なチャートであり続けるのか——。その答えである。