そして、運命のアタックが起こる。残り11kmの地点で、ヴィンゲゴーは自ら仕掛けた。その加速に一瞬だけガルが反応するも、すぐに千切れてしまう。完全に一人になったマリア・ローザは、前方の逃げ集団さえも吸収し、5時間3分55秒でフィニッシュラインを通過。ガルに1分15秒、元覇者ジャイ・ヒンドリーらに同タイム差をつける圧勝劇だった 。
これでヴィンゲゴーの今大会区間優勝は「5勝」。一つのジロでこれほどの勝利を重ねたのは、2018年のクリス・フルーム以来の快挙である 。ローマで確定する最終表彰台も、ヴィンゲゴー、ガル、ヒンドリーの3人でほぼ決まりだ
。
29歳のデンマーク人クライマーが今回ジロを制したことで、自転車界で最も格式高い「全グランツール勝者」のリストに新たな名前が刻まれることになった。これまでの達成者は、アンクティル、メルクス、ジモンディ、イノー、コンタドール、ニバリ、そしてフルームのみ。ヴィンゲゴーはそれに続く7人目だ 。
同世代のライバル、例えばタデイ・ポガチャルやエガン・ベルナルは、三大ツールのうち二つを制しているが、残る一つを手にできていない。2017年のフルーム以来、誰もこの領域に足を踏み入れていなかったことからも、その難しさと価値がわかる。平坦、丘陵、本格的な高山と、全く異なる個性を持つ3つのレースを勝ち切るには、才能、万能性、そして何より類まれな継続力が求められるのだ。
ヴィンゲゴーの偉業は、ヴィスマ・リースアバイクというチームの総合力なくしては成し得なかった。チームの力を見せつけた象徴が、前日に行われた第19ステージだ。
「クイーンステージ」と名高いドロミテの難関コースで勝利したのは、普段はヴィンゲゴーを献身的に支える“山の番人”セップ・クス 。エースの許しを得て逃げ集団に乗ったアメリカ人は、ピアーニ・ディ・ペッツェの最終登りで奮闘するイタリアのジュリオ・チッコーネを残り2kmで捕らえ、そのまま独走勝利。デレク・ジーを13秒差で退けた
。
この勝利はクスにとって特別な意味を持つ。これで彼も、すべてのグランツールで区間優勝を遂げた「トリロジー(三部作)」を完成させたのだ。ヴィンゲゴーの栄光の陰で、スーパーアシストもまた自身のキャリアの金字塔を打ち立てたのである 。
さらに、チームの未来を担う若き才能の成長も見逃せない。総合8位につける23歳のダヴィデ・ピガンツォーリは、今大会の大きな収穫だ。彼は最終山岳ステージまでポルトガルのアフォンソ・エウラリオとマリア・ビアンカ(新人賞) を激しく争い、第20ステージでは10位でフィニッシュ 。新人賞こそエウラリオに譲ることになったが、世界トップクラスの選手たちと渡り合った経験は、彼とイタリアのロードレース界、そしてヴィスマにとってかけがえのない財産となるだろう
。
総合優勝が決定的になる中、レース中からヴィンゲゴーとチーム首脳には「次なる挑戦」についての質問が集中している。それは、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの「ダブルツール」制覇だ。
現代自転車競技において最も困難な挑戦の一つとされ、これを達成した最後の選手は1998年のマルコ・パンターニ。それ以前には、メルクスやイノーといった一握りのレジェンドしか成し得ていない 。ヴィンゲゴーがこのダブルに挑むとなれば、2025年のツールで王者の座を奪い返した宿敵タデイ・ポガチャルとの、夢の直接対決が実現する。ポガチャルは今回のジロを欠場しており、2026年7月のフランス決戦が今から待ちきれない。
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