WRC 2026で示された2つの商用化ルート
2026年8月に北京で開催された世界ロボット大会(WRC 2026)で、天工ロボットの新たな方向性が披露されました。小型で扱いやすい人型ロボット「天工Omni」と、来場者対応を担ったフルサイズの「天工3.0」です。
天工Omniは身長1.35メートル、重量39キログラムで初披露され、天工3.0は人の行き交う展示会場を自律的に移動しながら、来場者へのあいさつ、車両の説明、相談対応を行いました。
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注目すべき点は、ロボットが歩いたり踊ったりする単発のデモではなく、公共空間で複数の作業をつなげた業務フローを試したことです。一方で、現時点の情報が示しているのはあくまで展示実演と将来計画であり、人型ロボットがすでに自動車販売で安定した収益を大規模に生み出していることを証明するものではありません。
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天工Omni――狭い場所に入りやすい小型ボディ
天工Omniは、天工シリーズに加わった軽量モデルです。身長1.35メートル、重量39キログラムという小型・軽量なボディは、フルサイズの人型ロボットでは動きにくい場所での運用を意識したものとされています。想定用途には、狭い空間での作業、研究・教育、施設案内、緊急救助、家庭向けサービスなどが挙げられています。
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住宅や救助現場、狭い作業エリアは、大型ロボットを前提に設計されていません。天井や通路の幅に余裕がなく、段差や不整地があり、方向転換できるスペースも限られる場合があります。小型で軽い機体なら、こうした場所で取り回しやすくなる可能性があります。ただし、救助や家庭での利用は現時点では想定用途であり、各分野で実際に導入された実績を示す情報ではありません。
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技術面では、運動制御を担う「運動小脳」やマルチモーダル知覚を統合し、大規模モデルをエッジ環境で動かせると説明されています。また、オープンなシステムを採用し、研究者や開発者による二次開発にも対応します。
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そのためOmniは、完成した展示用マシンというだけでなく、用途に応じて改良・応用できる開発プラットフォームとしての性格も持っています。
梅花桩、階段、四つんばい歩行を実演
会場で天工Omniが見せたのは、姿勢と移動方法を柔軟に変えながら課題をこなす動きでした。梅の花のように配置された足場を渡り、階段を上り下りし、四つんばいで進み、オフィスを想定した作業として書類の印刷も行いました。
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四つんばいでの移動は、ロボットの姿勢を低くして障害物の下を通ったり、直立歩行が難しい地形に対応したりする際の選択肢になります。今回の実演は、姿勢変更やバランス制御、環境への適応力を示すものです。しかし、それだけで実際の災害現場や家庭でサービスを継続的に提供できると判断することはできません。
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また、天工Omniは地面の状態を観察し、どこに足を置くかを選ぶ歩行方法も紹介されました。完全に予測できる平らな床で決められた動きを繰り返すより、地形を見ながら歩幅や足場を判断する仕組みのほうが、現実の利用には近い考え方です。ただし、展示会のコースは依然として管理された試験環境であり、実運用そのものではありません。
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天工3.0は「シリコン製の販売員」に
もう一つの大きな実演では、天工3.0が商用サービス向けの役割を担いました。いわば「シリコン製のレコメンダー」として、周囲の状況を把握し、移動ルートを計画し、混雑した会場で来場者を避けながら走行。人の手を借りずに、迎客、車種説明、相談対応を行いました。
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自動車販売では、製品情報を読み上げるだけでは十分ではありません。ロボットには、人の流れが変わる空間を移動し、来場者に近づく、あるいは呼びかけに応じる、関心に合わせて情報を提示する、といった複数の能力が求められます。WRCでの天工3.0は、こうした接客の一連の流れをまとめて試したことになります。
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もっとも、販売店ごとに同じ水準で動けるのか、展示会以外でどの程度の人間による監督が必要なのか、販売実績を改善できるのかは、今回の報道だけでは分かりません。展示会で目を引く実演を、日々の業務で安定して使える製品に変えられるかが、今後の焦点になります。
自動車販売で想定される役割
天工3.0の活用先は、WRCの展示ブースに限られません。発表された計画では、メルセデス・ベンツとの戦略的提携を背景に、次のような場面が想定されています。
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- 自動車販売店での迎客・案内
- 車種や機能の説明
- 来場者へのモデル推薦
- インタラクティブなチェックイン対応
- モーターショーやイベントでの接客
- ライブ配信での参加者との交流
- 車両引き渡しなどのセレモニー対応
- 車両オーナー向けサービス
実用化が進めば、ロボットは販売員やサービススタッフをすぐに置き換えるというより、まずは人手を補う役割を担う可能性があります。来場者が集中するイベントで案内の範囲を広げたり、よくある質問への対応を標準化したりすることで、顧客体験の一部を支援できるためです。
ただし、現時点で確認できるのは、あくまで導入に向けたロードマップと展示での実演です。導入台数、運用コスト、投資回収、売上への効果を裏付ける公開データは示されていません。
実演から「使える業務」へ
今回の天工シリーズの発表は、人型ロボットの売り出し方が変わりつつあることを映しています。天工Omniは、サイズと姿勢の柔軟性を生かし、狭い場所や複雑な地形に対応するプラットフォームとして紹介されました。一方の天工3.0は、人の動きが変化する公共空間で、認識、移動、接客を組み合わせました。
重要なのは、「歩けるか」「階段を上れるか」という能力だけではありません。来場者、障害物、目的が刻々と変わる環境で、人間の介入を抑えながら、役に立つ作業を最後まで完了できるかどうかです。
WRC 2026は、人型ロボットが見栄えのする技能デモから、用途を絞った顧客対応や商用業務へ進もうとしていることを示す材料になりました。ただし、信頼性、安全性、運用費、監督の必要性、販売への効果は、まだ検証が必要です。現段階での最も妥当な見方は、天工Omniと天工3.0が商用化への現実的な一歩を示した一方、収益を伴う大規模な自動車小売への定着はこれからだ、というものです。
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