フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOは、新EV「ルーチェ」への批判に対し、「見て試せば、これがフェラーリだとすぐに理解できる」と反論。その本物のフェラーリたる所以を主張した。 55万ユーロ(約8300万円)という価格設定について、ヴィーニャCEOは「イノベーションには対価を支払わなければならない」と明言。60件以上の新特許を含む技術開発への投資が背景にあると説明した。

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2026年5月25日、ローマのヴェラ・ディ・カラトラバでフェラーリが初の完全電気自動車「ルーチェ」のベールを脱いだ瞬間、市場は冷酷な反応を示した。ミラノ市場でフェラーリの株価は8.4%急落し、約30億ユーロの時価総額が吹き飛んだのだ 。
その3日後、ベネデット・ヴィーニャCEOはモデナで開催された自動車イベントに登壇し、投資家、顧客、そしてティフォージ(熱狂的ファン)を安心させるための強力なメッセージを発信した。その核心は、「ルーチェ」は全く新しい発想から生まれた本物のフェラーリであり、ブランドの内燃機関の魂を脅かすものでは一切ない、というものだ。
「フェラーリ・ルーチェは、他社の電気自動車とは全く異なります」とヴィーニャCEOは語った。「実際に見て、試していただければ、これがフェラーリとして構想された車だとすぐにご理解いただけるでしょう」。
「ルーチェ」の価格は55万ユーロ(約8300万円)で、フェラーリ自身のSUV「プロサングエ」をも上回る設定だ。この高価格に対しては、その価値に見合うのかという厳しい視線が注がれた。これに対し、ヴィーニャCEOの返答は端的だった。「イノベーションには対価を支払わなければならない」。
2026年の「モーターバレー・フェスト」での講演で、CEOは技術革新にプレミアムを課すことは「私の信念の一つ」であり、それを収益化しなければ、従業員、サプライチェーン、そして技術そのものに対する「三重の背信行為」になると説明した 。
この車両は60件以上の新規特許を搭載し、5年の歳月をかけて開発された専用プラットフォームに基づいている 。その内容は、合計1,000馬力以上(ローンチコントロール時1,050cv)を発生する4基の独立型電気モーター、800ボルトアーキテクチャの122kWhバッテリー、四輪操舵とトルクベクタリングを備えたアクティブサスペンションなど、非常に野心的だ
。ヴィーニャCEOの主張は、この技術パッケージがセグメントにおいて前例のないものであり、価格はその創造にかかったコストを反映したに過ぎない、という点にある。
ヴィーニャCEOは、市場とメディアの否定的な反応に対し、実際の購買行動こそが真実だと反論した。「新規のお客様を含め、強い関心が寄せられています」と彼は述べ、ローマでの発表会で1600人の顧客に「ルーチェ」を披露したことを明かした 。
「すでに銀行振込も受けており、会場にいたお客様が欲しいとおっしゃっています」とCEOは付け加えた。ただし、発言時点では具体的な予約注文台数は明かさなかった 。この主張は重要だ。デザインへの批判が渦巻く中でも、「ルーチェ」が商業的な魅力を持つ存在であると位置づけているからだ。
戦略的に最も重要なメッセージは、ヴィーニャCEOが「ルーチェ」の登場をもって、フェラーリの内燃機関の遺産が終わるという考えを明確に否定したことだろう。「大々的なメディア露出により、従来のエンジンが段階的に廃止されるかのような印象を与えたかもしれませんが、そうではありません」と彼は明言した。「以前から申し上げている通り、私たちはすべてのタイプのパワートレインを生産し続けます。最終的な決定権はお客様にあるからです」。
この「AかBか」ではなく「AもBも」という戦略こそ、フェラーリの電動化計画の核心である。同社は2030年のパワートレイン構成比を、内燃機関40%、ハイブリッド40%、完全電気自動車20%に修正した。これは、2022年に設定したEV40%という目標からの下方修正となる 。ヴィーニャCEOは、2026年だけでも、「ルーチェ」と並行してハイブリッドの「テスタロッサ」と内燃機関モデル1車種を生産することを認めている
。
この車両自体、フェラーリの伝統的な2シータースポーツカーの枠組みからは大きく逸脱している。「ルーチェ」の特徴は以下の通りだ。
車両重量は2.2トンを超え、トランク容量は600リットル。この実用的なスペックと、LoveFromの影響を受けたデザインが相まって、批評家たちは「ルーチェ」を、伝統的なフェラーリというよりは、大衆向けEVや高級家電製品になぞらえた 。
株式市場の反応は即時的で、容赦ないものだった。5月26日、ミラノ市場のフェラーリ株は一時8.4%下落し、米国上場のADR(米国預託証券)も5.3%下落した 。アナリストは、この下落の要因を「デザイン嫌悪」や「噂で買って事実で売る」という典型的な市場心理に求めた
。ある投資家はロイターの取材に対し、この株は「美的感覚への失望によって罰せられている」と語った
。
この急落は、フェラーリの受注残が2027年まで続く好調さを示し、2026年第1四半期の決算も良好であったにもかかわらず発生した。市場の反応が、ファンダメンタルズ(基礎的条件)よりもイメージによって大きく左右されたことを浮き彫りにしている 。
フェラーリがEVに注力するこのタイミングは、主要な競合他社が撤退している時期と重なる。ランボルギーニは完全電気自動車の計画を断念し、プラグインハイブリッドに注力している 。ポルシェもまた、ラグジュアリーEVの需要が予想よりも弱いことを受けて、EVへの野心を縮小した
。
ヴィーニャCEOが「ルーチェ」を「過渡期のモデル」ではなく「補完的なモデル」と位置づけるのは、フェラーリに戦略的な柔軟性を与えるためだ。3種類のパワートレインすべてを生産し続けることで、フェラーリは今後10年間のラグジュアリーカーの需要がどの方向に進もうとも、プレミアム価格とブランドの独占性を維持しながら、それに対応することができる。
このアプローチは、2030年目標の修正理由も説明している。当初の2022年の計画では、2030年までにフェラーリのラインナップの40%をEVにすることを目指していた 。完全電気自動車20%という新たな目標は、富裕層のバイヤーが規制当局がかつて予測したペースで内燃機関エンジンを放棄しているわけではないという、現実的な評価を反映している。そして、何よりもフェラーリの顧客が選択肢を重視することを示している。
ヴィーニャCEOの「ルーチェ」に対する擁護は、結局のところ、その「選択肢」の擁護に他ならない。彼の論法に従えば、この車は「作らざるを得なかったから」ではなく、「それを望む顧客がおり、フェラーリが他に誰も試みなかったものをエンジニアリングできたから」存在するのである。市場が最終的に同意するかどうかは、CEOの言葉よりも、2026年10月に納車が始まった後の「ルーチェ」の実際のパフォーマンスにかかっている。
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フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOは、新EV「ルーチェ」への批判に対し、「見て試せば、これがフェラーリだとすぐに理解できる」と反論。その本物のフェラーリたる所以を主張した。
フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOは、新EV「ルーチェ」への批判に対し、「見て試せば、これがフェラーリだとすぐに理解できる」と反論。その本物のフェラーリたる所以を主張した。 55万ユーロ(約8300万円)という価格設定について、ヴィーニャCEOは「イノベーションには対価を支払わなければならない」と明言。60件以上の新特許を含む技術開発への投資が背景にあると説明した。
CEOは「ルーチェ」の登場がV8やV12エンジンの終焉を意味するという見方を明確に否定。「最終的な決定権はお客様にある」とし、内燃機関、ハイブリッド、EVの全パワートレインを生産し続ける戦略を強調した。