国別の前年同月比動向:
EU単体の67%増に対し、広域欧州で46.5%増と伸び率が抑えられているのは、ノルウェーやイタリア、スペインなどでの大幅減少が、英国やスイスなどの数字と合算されることで全体を押し下げたためだ。これは、ドイツやフランスといったテスラにとって基幹となる市場での回復がいかに力強かったかを、かえって浮き彫りにしている。ドイツでの3149台という数字は、前年同月比256%増であると同時に、2026年1月比でも142%増という、2年以上で最も好調なクオーターの滑り出しを示すものだった 。
2025年:崩壊の年
テスラの2025年の欧州年間登録台数は、2024年の約32万6000台から約23万5000台へと、衝撃的な約28%減を記録した 。EU域内に限れば状況はさらに深刻で、EV市場全体がライバルメーカー主導で拡大する中、テスラは他社を大きく引き離す37.2%の販売減と、全自動車メーカー中最も厳しい結果に終わった
。ノルウェーを唯一の例外として、テスラの販売は欧州の全市場で前年を下回った
。
2026年:最悪の船出、そして反転
新年を迎えても状況はすぐには好転しなかった。2026年1月、主要5市場の登録台数は前年同月比で44%の大幅減。フランスは42%減の661台、オランダは67%減、ノルウェーに至っては88%減と、まさに壊滅的な数字が並んだ 。
反転の兆しが見えたのは2月。欧州主要15カ国で前年同月比10%増の1万7425台を記録し、1年以上ぶりの前年超えを達成した 。3月にはこの動きが加速し、フランスでは登録台数が3倍以上に、北欧諸国では倍増する勢いを見せた
。そして4月、3カ月連続の成長トレンドが確固たるものとなった。ただし、これらの大幅な伸び率は、2025年の極端に低い水準との比較によって、見かけ以上に大きく見えている点には注意が必要だ。
回復を示す登録台数の数字の裏で、より冷静に見極めるべき競争環境の変化が起きている。BYDは2025年に販売台数でテスラを抜き、世界最大のEVメーカーとなり、その欧州での足場を着実に固めている 。BYDを筆頭とする中国EVブランド群は、2025年のEU全体のEV販売増加を大きく牽引したが、テスラはその恩恵にあずかるどころか、37.2%という最大の販売減少率を記録し、成長の波に乗り遅れた
。
4月のデータ発表後に行われた分析では、こうした顕著な登録台数の伸びが、「中国のライバル企業に対する市場シェアの浸食加速」を覆い隠していると警鐘を鳴らしている。つまり、絶対的な販売台数が回復する一方で、競争上の地盤は着実に失われているというわけだ 。中国の各社が攻撃的な価格設定でシェアを奪う構図は、業界データからも明らかである。
販売面での混乱のさなか、テスラは長期的な欧州へのコミットメントを大規模投資で改めて示した。2026年5月、同社はドイツ・グリューンハイデにあるベルリン・ブランデンブルク・ギガファクトリーのバッテリーセル生産に、2億5000万ドル(約360億円) を追加投入すると発表した 。
この拡張計画の主なポイントは以下の通り。
この投資の最終的な狙いは、2027年をめどにバッテリーセルと車両の一貫生産体制を実現することだ。これはテスラにとって欧州初の試みであり、サプライチェーンの強靭化を図る重要な布石と見られている。なお、テスラは長期的にこの工場で年間100万台の車両生産を目標に掲げている 。
欧州におけるテスラのFSDソフトウェアの規制認可の進捗については、今回の情報源からは具体的なアップデートは見つからなかった。正式な申請、認可の節目、拒否といった確定的な情報はいずれも確認されていない。これは、欧州の自動運転規制の認可プロセスが依然として時間を要していることを示唆するものであり、現時点では証拠に基づいた進捗を報告できる段階にない。