このラウンドは、米国の大手成長株投資会社General AtlanticとScaleup Europe Fundが共同でリードしました。ファンドの出資額は、一次資本として約3億~4.5億ユーロ。ブルームバーグやSilicon Republicなどは3億ユーロと報じる一方、EQTの公式発表などではシリーズFの一次資本全体である4.5億ユーロがファンドによるものとしています。シリーズF全体は、一次株式4.5億ユーロとセカンダリー売却5.5億ユーロで構成され、総額10億ユーロを超える大型調達となりました。
このファンドは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が2025年の「欧州連合一般教書演説(State of the Union)」で提唱したものです。その目的は、欧州の有望なスタートアップが成長段階で資金不足に陥り、結果としてシリコンバレーなど域外へ流出してしまう「スケールアップギャップ」を解消することにあります。
ファンドは以下の分野を「戦略的ディープテック」と位置づけ、注力します。
ファンドの創業時の出資者には、欧州を代表する機関投資家が名を連ねています。
2014年にフィンランドで創業されたICEYEは、世界最大の合成開口レーダー(SAR)衛星コンステレーションを所有・運用しています。SAR技術の最大の強みは、夜間や雲に覆われた状況でも地表を観測できる点にあります。
ICEYEの技術は、以下のような高付加価値分野で活用されています。
同社は、欧州各国の防衛・政府需要の急拡大を背景に、2027年までに売上高10億ユーロ超を見込んでいます。
ICEYEは、欧州宇宙産業としては前例のないペースで衛星生産を拡大しています。
ラファウ・モドジェフスキCEOは、欧州各国軍からの需要急増を受け、生産ペースを週2基に引き上げる目標を表明しています。同社が直面する制約はもはや需要ではなく、工場の生産能力そのものだとされています。
ファンドの運用をEQTが担うことについては、一部で懸念の声も上がっています。EQTの主要事業がレバレッジド・バイアウトにあり、本来のディープテック育成に適しているのかという疑問です。
今回のICEYEへの投資は、収益を上げ、防衛需要に支えられた成長後期の企業であり、EQTの得意分野に合致しています。しかし、ファンドが本来目指すべき、より初期段階でリスクの高い戦略的ディープテック企業への投資が今後可能かどうかは、依然として未知数です。