欧州の都市間テック競争において、一つの重要なデータが示されました。ロンドンが正式に欧州トップのテックハブの座を奪還したのです。これは、一時パリがロンドンを上回ったランキングを逆転する形となりました 。この復権は、英国全体のテック投資の復調を背景としています。例えば、4月下旬の週間レポートでは、英国は週間で1億9,240万ユーロの投資を集め、ディープテック、人工知能(AI)、セキュリティが投資額のトップ3業種でした 。ロンドンの首位返り咲きは、起業家や機関投資家にとってのこの都市の普遍的な魅力を改めて印象付ける、象徴的な勝利と言えるでしょう。
今週最も注目された買収劇は、英国のオープンバンキングリーダーであるTrueLayerが、オランダのフィンテック企業In3を買収した案件です。In3は銀行振込を利用した消費者信用に特化した20名規模の企業でした 。TrueLayerは、In3の技術を統合することで、自社の広範な加盟店ネットワークに対し「チェックアウト時のクレジット(今すぐ買って、銀行口座から後払い)」機能を直接提供できるようになります。買収金額は非公開ですが、この動きは、決済企業が融資機能を中核サービスに組み込もうと競争を激化させる、欧州フィンテック業界の新たな再編局面の到来を告げるものです。
大型案件以外にも、以下のような資金調達が今週の話題を彩りました。
今回のまとめが伝えたのは、数字だけではありません。特集として、戦時下のウクライナで事業を拡大するGlovoの現地レポートも掲載され、テクノロジー企業がいかに極限状況の事業環境を乗り越えているか、その最前線も紹介されました 。
月単位の流れで見ると、5月末のこの記録的な急増は、4月のTech.eu Summitの週とは対照的です。4月27日に公開されたレポートでは、65件以上のディールが追跡されたものの、総額は6億ユーロ超と比較的落ち着いた数字でした。当時の主役はディープテックとAIで、国別では英国、フィンランド、スイスが上位を占めていました 。今回の31億ユーロという数字は、欧州のベンチャー市場が、確信度の高い分野へ資金を一極集中させる新たな段階に入った可能性を示唆しています。