NASAの資金提供を受けた科学チームは、WB-57高高度研究機で月の影を追跡する 。このジェット機は高度約1万5千メートル(5万フィート)の成層圏を飛行し、雲や大気の乱れの影響をほぼ受けないため、最もクリアな観測が可能となる 。
機首に搭載されるのは SCIFLIマルチスペクトル空中イメージャー(SAMI) 。4台のカメラから成り、可視光から赤外線まで複数の波長で毎秒20コマ以上の高解像度画像を撮影する 。時速約740km(460マイル)で皆既帯に沿って飛行することで、コロナの観測時間は約3分近くまで延長され、地上の観測者より約30秒長くデータを得られる 。また、成層圏の高さでは、地上に届く前に下層大気に吸収される赤外線波長も観測できる 。
NASAは今回のキャンペーンのためにWB-57を3機投入する 。これらに加え、アイルランド空軍や複数の民間小型機も最適な観測位置を求めて飛行する予定だ 。
NASA支援の「全米気球観測プロジェクト(NEBP)」では、米国の5大学の学生チームがアイスランドとスペインに派遣され、日食の前後を通じて科学気球を打ち上げる 。モンタナ州立大学のアンジェラ・デ・ジャルダン博士が率いるこのプロジェクトでは、合計で約80〜86機の気球打ち上げが計画されている 。
ESAのソーラー・オービター探査機は、8月9日から特別な「リモートセンシング観測ウィンドウ(RSW)」に入り、地上キャンペーンとの連携観測を実施する 。搭載するリモートセンシング機器(EUI、PHI、Metis、SPICE)は太陽大気を撮影し、特に8月12日は重点観測が行われる 。
特筆すべきは、日食の数週間前、ソーラー・オービターが太陽の裏側に位置しているという点だ。これにより、地球からは見えない太陽の裏側の磁場マップを作成することができ、地球周回探査機のデータと組み合わせることで、太陽の磁気活動の全体像を把握できる 。このデータは、地上および航空機による日食観測と相互参照され、コロナの構造や太陽風の起源解明に貢献する 。
ESAのProba-3ミッションは、搭載するASPIICSコロナグラフを用いて、7月28日から継続的なコロナグラフィ観測軌道に入っており、8月12日も地上の日食前後に観測を実施する 。ESAは sun.esa.int/eclipse で日次シミュレーションを公開し、ソーラー・オービターとProba-3の予測を調整している 。
皆既帯に位置するスペイン・ロケテスの歴史ある**エブラ天文台(Observatori de l'Ebre)**は、地上からの太陽・大気観測を担当。コロナの輝線、磁場変動、電離圏擾乱を観測し、航空機や宇宙からのデータを補完する。
スペイン国立地理院(IGN)が調整する他の地上観測所も、日食のコンタクトタイミングの計測や電離圏監視を行う 。
1. 太陽のコロナはなぜ数百万度にまで加熱されるのか?
太陽の外側大気(コロナ)は表面より数百度も高温であり、これは単純な物理法則では説明できない。WB-57のSAMIイメージャーは、コロナの微細構造と温度勾配を高解像度・マルチスペクトルで撮影 。これをソーラー・オービターの同時観測データと比較し、コロナ加熱メカニズムのモデル検証を行う 。
2. 太陽風はどのように太陽から伝播するのか?
地上のコロナグラフ、WB-57、ソーラー・オービター、Proba-3のASPIICSコロナグラフが連携し、低コロナから太陽風へのプラズマ流を追跡 。皆既日食は、太陽風が加速されるコロナの最も淡い領域を観測できる稀有な機会を提供する。
3. 急激な日陰は大気にどのような影響を与えるのか?
気球観測キャンペーンは、日食による地表温度の低下、風向・風速の変化、大気境界層の乱流変化を測定 。これらのデータは、太陽放射が気象や境界層ダイナミクスを駆動するプロセスのモデル改善に貢献する。
4. 電離圏は急激な太陽放射フラックスの変化にどう応答するのか?
エブラ天文台と他の地上観測所は、皆既中の電離圏電子密度と磁場変動を観測。太陽放射と地球超高層大気の結合を探る。
NASAは8月12日午後1時15分(米東部時間)から NASA.gov/live でライブ配信を予定 。ESAは sun.esa.int/eclipse で日次シミュレーションを更新中。詳細な調整リソースは esa.int/solareclipse でも提供されている 。
欧州全域、北米北部、西アフリカでは部分日食が観測可能。多くの地点で太陽の90%以上が覆われる 。