もっとも、これはすべての屋上に必ず設備が設置されるという意味ではありません。どの場所が技術的に適しているかを判断し、実際のネットワーク投資や機器の設置を行うのはMNOです。
IMDAは、街灯を含む道路設備やストリートファニチャーについても、通信設備を置くための無償スペースを検討しています。屋上を使えない場合や、地上レベルでより細かな通信カバーが必要な場所で、通信事業者が小型基地局(スモールセル)を配置するための選択肢になります。
5Gでは、混雑する屋外エリアで大容量通信を支えるため、基地局をより近い間隔で配置する必要が生じる場合があります。過去の協議資料では、公園、緑道、幹線道路などがこうした展開の対象例として挙げられています。
つまり、今回の提案は建物だけの問題ではありません。対象となる道路設備の所有者も、通信機器の設置を見込んだアクセス調整を行うことになります。一方、設備の設計・設置・運用は通信事業者が担います。
通信ライザーは、階をまたぐ通信ケーブルを収容・保護する縦方向の経路です。ケーブルトレーは、ケーブルを建物内に配分するためのルートを提供します。これらをB1まであらかじめ整備しておけば、完成後の構造物を大きく壊すことなく、モバイル通信や固定回線の接続を改善しやすくなります。
B1が重視されるのは、多くの建物でこの階が実用的な動線になっているためです。配車サービスの乗降、食品・荷物の受け渡し、緊急時のアクセスなどに使われることから、住民、テナント、来訪者、配送業者にとって安定した通信が役立ちます。
改定案が採用された場合、建物所有者や開発事業者には主に次の対応が求められます。
これらは、スペース、配線経路、建物側の設備に関する義務です。建物所有者が通信事業者の機器やネットワーク構成を選ぶことを意味するものではありません。
役割分担は明確です。建物所有者側が「通信設備を受け入れられる建物」を準備し、通信事業者側がネットワークの設計と実際の展開を決めます。
住民やテナントにとっては、入居時から携帯通信を使いやすくなることが実質的なメリットです。引っ越し業者や工事業者との連絡、フードデリバリーやEC配送の受け取り、仕事や家族との連絡など、日常的な場面で通信環境の差が表れます。
ただし、これは改定案によって特定のサービスが実現するという保証ではありません。今回の中心は、ネットワーク展開に必要な物理的条件――スペース、アクセス、ケーブル経路――を整えることです。実際の通信範囲や容量、将来サービスの普及は、通信事業者の投資、技術設計、利用需要などにも左右されます。
2026年の意見募集資料には、改定案の確定した施行日は記載されていません。IMDAは寄せられた意見を検討し、改定を進める場合は変更後のCOPIFを公表する必要があります。それまでは、提案をすでに施行されたルールとして扱うことはできません。
開発事業者や設計チームにとっての当面のポイントは、最終的な改定版と施行日を確認することです。同時に、新しい開発計画では、通信設備用のスペース、屋上や街灯へのアクセス、B1までの配線経路を早い段階から検討しておくことが、今回の提案が示す方向性といえます。