韓国の大手IT企業Kakaoは、KakaoTalkを軸とするプラットフォーム事業を新会社(仮称)KakaoAIへ分離し、投資事業などを残す存続会社をKakaoXに改称する計画を承認しました。KakaoAIはKakaoTalk、AI、広告、コマースを担い、KakaoXは投資事業と主要な関連会社を管理・育成します。13
計画どおり進めば、会社分割の効力発生日は2027年1月1日。KakaoAIは2027年1月27日に韓国取引所への再上場を目指します。ただし、いずれも株主承認などを前提とした予定です。1315
Kakaoはどのように分かれるのか
今回の手法は、既存株主が保有株数に応じて両社の株式を受け取るプロラタ方式のスピンオフです。純資産の帳簿価額を基準にした分割比率は、KakaoAIが0.36、KakaoXが0.64とされています。23
つまり、KakaoTalkを起点とした消費者向けプラットフォームとAI事業を、投資・関連会社管理を担う事業群から切り離します。Kakaoは、事業特性の異なる部門を別々の経営体制に置くことで、AI戦略と投資戦略の双方を明確にしたい考えです。
KakaoAIが担う事業
新会社KakaoAIには、次の事業が移管される予定です。
- AI
- メッセージングアプリ「KakaoTalk」
- 広告
- 電子商取引・コマース関連事業
Kakaoは、KakaoTalkの大規模なプラットフォームとAIを結び付け、広告やコマースを含む「AI中核企業」へ成長させる構想を示しています。15
2030年の目標は以下のとおりです。
- 売上高6兆ウォン以上
- 営業利益率30%超 11415
KakaoAIは今回の再編における成長戦略の中心です。ただし、発表された目標は将来計画であり、現時点でAIによる新たな収益を実現したことを示すものではありません。今後は、KakaoTalkの既存ユーザー基盤をAIやコマースの売上拡大につなげられるかが焦点になります。
KakaoXが担う事業
KakaoXは、Kakaoの事業を引き継ぐ存続会社です。主に次の分野の投資・関連会社を管理し、成長事業への投資も担います。311
- フィンテック
- コンテンツ・エンターテインメント
- モビリティー
- 将来の成長分野への投資
KakaoXは、2030年に中核事業の売上高10兆ウォン超を目標としています。311
KakaoTalkとAIに経営資源を集中するKakaoAIに対し、KakaoXは投資ポートフォリオと関連会社を管理するプラットフォームとして位置付けられます。既存事業を維持しながら、新たな成長機会を探す役割も担うことになります。
なぜKakaoは分離を進めるのか
Kakaoは、事業ごとに異なる経営課題へより専門的に対応するため、今回の分離を計画しています。発表されている主な狙いは次の4点です。1610
- AI分野への特化:KakaoTalkとAI事業に専任の経営体制を置く
- 意思決定の迅速化:事業ごとに独立した管理システムを整える
- 資本配分の改善:各事業の特性に合った投資判断を行う
- コングロマリット・ディスカウントの縮小:複数事業を抱える企業に対して市場が一括して低く評価する状態を見直し、各事業の価値を評価しやすくする
Kakaoにとっては、AI戦略を投資家に見えやすくする一方、投資・関連会社事業には別の経営基盤を与える再編です。ただし、会社を分けること自体が株価上昇や企業価値の向上を保証するわけではありません。実際に評価が高まるかどうかは、KakaoAIの成長実績とKakaoXのポートフォリオ運営にかかっています。
今後の予定と承認手続き
現時点で示されている日程は以下のとおりです。
- 2026年12月17日:臨時株主総会で会社分割案を審議する予定 13
- 2027年1月1日:会社分割の効力発生日として予定 1315
- 2027年1月27日:KakaoAIの韓国取引所への再上場と、KakaoXの新たな上場形態への移行を予定 1315
これらは確定済みの実施結果ではなく、株主承認や上場関連の手続きを経て進められる予定です。まずは12月の臨時株主総会が重要な節目になります。
2025年の業績と株主還元策
Kakaoの2025年連結売上高は8兆1,070億ウォンでした。1 今回掲げたKakaoAIとKakaoXの2030年目標は、この実績を基盤に事業を拡大しながら、両社の役割を明確にする試みといえます。
またKakaoは、分離後3年間で総額3,000億ウォンの自社株買いと消却を実施する方針も示しました。15 事業再編だけでなく、株主への直接的な還元策も組み合わせる形です。
再編で注目すべきポイント
直近では、株主が会社分割案を承認するか、法的な分離と予定どおりの再上場を完了できるかが焦点になります。
その先にある本質的な問いは、KakaoAIがAI関連の新たな収益をどれだけ生み出せるか、そしてKakaoXが複雑化しやすい関連会社群を効率的に管理できるかです。再編の目的が達成されるかどうかは、組織を分けることではなく、分離後の実行力によって判断されることになります。
現段階でのKakaoの計画は、KakaoAIをKakaoTalkとAIに集中する成長企業、KakaoXを投資・関連会社管理の中核企業として再設計する戦略的な組織再編と捉えるのが適切です。2030年の数値目標と3,000億ウォンの株主還元策が、今後この再編を評価するための主要な基準になります。