フィリピンの警告からわずか1日後の5月31日、中国軍と沿岸警備隊は、スカボロー礁周辺でパトロールを実施したと発表した 。中国人民解放軍南部戦区は、海軍と空軍がスカボロー礁の「領海および領空」とその周辺海域で「戦闘即応態勢パトロール」を実施したと声明。中国海警局も同海域で「法執行パトロール」を別途実施したと発表した
。
このパトロールは、2025年から2026年にかけて激化している一連の活動の一環だ。アジア海洋透明性イニシアティブ(AMTI)のデータによると、中国沿岸警備隊の2025年のスカボロー礁での活動量は「船日数」で前年の2倍以上に増加。年間352日でパトロールが記録され、アナリストは北京の焦点がこの岩礁とサビナ礁に「大きくシフト」したと分析している 。
ヘグゼス長官は、中国の急速な軍事増強に対して「当然の警戒感」があると警告し、同盟国により強力で「自立した」防衛力を求めると発言。具体的に、トランプ政権が同盟国・パートナー国に期待する防衛費の基準として、**国内総生産(GDP)比3.5%**という具体的な数字を示したのだ 。
米国自身も1.5兆ドル規模の軍事投資を行うと表明した上で、ヘグゼス長官は、裕福な同盟国がいつまでも米国の軍事力に依存するのではなく、「真のパートナーとして責任を受け入れる」べきだと強調 。これは、単一の覇権国家が存在しない「自由で開かれた太平洋」を確保するための中核戦略だと位置づけた
。
彼の発言は、ワシントンが同盟関係へのコミットメントを維持しつつも、地域の安全保障が「米国の納税者に不均衡に依存」し、同盟国にとって「持続不可能な松葉杖」となってきた時代を終わらせる決意を示すものだった 。
今回のシャングリラ会合での応酬は、スカボロー礁と南シナ海をめぐる数十年にわたる争いの一幕に過ぎない。
フィリピンが「パナタグ礁」、中国が「黄岩島」と呼ぶこの岩礁は、フィリピンの排他的経済水域内に位置するが、北京は自国領土の一部と主張している 。2012年のにらみ合い以降、この地形は中国の事実上の支配下にあり、中国海警局が常時展開して船舶のアクセスを規制している
。
この未解決の主権紛争は、外交的な打開策を拒み続けてきた。中国の九段線による主張を退けた2016年の常設仲裁裁判所の判決を北京は認めておらず、南シナ海における「行動規範」をめぐるASEANと中国の交渉も難航している。
2026年のシャングリラ会合は、緊張緩和という外交辞令と、実際のパトロールや脅威認識という運用上の現実との間にあるギャップを鮮明にした。
テオドロ長官が、米中首脳会談後であっても中国は依然として「深刻な脅威」であると公言したことは、マニラの評価を如実に示している。それは、大国間の関係改善が、より小さな沿岸国への威圧の減少に必ずしも直結しないという冷徹な現実認識だ。
シャングリラ会合後のパトロールが示したように、スカボロー礁をめぐる緊張は解決に向かう問題ではない。世界で最も争いの多い海域の一つにおいて、脅威認識や軍事態勢、そして同盟国への負担要求を形成し続ける、慢性的な火種となっている。
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