一方、インド側の説明はまったく異なります。BSF関係者はインドメディアに対し、そもそも発砲は起きていないと主張し、バングラデシュ側メディアの報道を「捏造」または「フェイクニュース」と否定しました。
両国の公式説明が完全に食い違っているため、独立した確認は難しく、この出来事は事実関係自体が争われている事件となっています。ただし、報道が広まったこと自体が国境の警戒態勢を強め、緊張を高める要因になりました。
もう一つの火種が、**ティンビガ回廊(Tin Bigha Corridor)**周辺でのフェンス設置をめぐる対立です。
この回廊は、インド領内の細長い土地を通ってダハグラム=アンガルポタ地区とバングラデシュ本土を結ぶ通路で、2011年にインドがバングラデシュに使用を認めた特別な区域です。
2025年初め、インド側の住民が国境の有刺鉄線フェンスを補強するため竹の支柱を設置しました。しかしBGBは、これが国境線に近すぎる、あるいは**ゼロライン(国境直近の緩衝地帯)**内に入る可能性があるとして抗議し、現場は緊張状態になりました。
この問題は単なる竹の支柱の話ではなく、国境フェンスをどこまで設置できるのかという両国の根本的な見解の違いを反映しています。
バングラデシュは、BSFによる一部のフェンス建設を二国間合意に反する「無許可の建設」だと主張。一方インドは、これを正当な国境管理措置だと説明しています。
こうした対立は一つの場所に限られていません。
バングラデシュ政府によると、国境の少なくとも5か所でフェンス建設をめぐる問題が発生しました。これにはチャパイナワブガンジ、ナオガオン、ラルモニルハットなどが含まれます。
事態は外交問題にも発展し、2025年1月、バングラデシュ政府はインドの高等弁務官(大使に相当)を呼び出し抗議しました。
現場では、BSFがフェンス工事を始めた際にBGBや地元住民が反対し、対峙や工事の一時停止に発展するケースも報じられています。
こうした繰り返される衝突は、国境近くの小さな建設作業でさえ、外交レベルの摩擦へ発展し得る構造的な問題を示しています。
最近の緊張を理解するうえで重要なのが、2024年8月5日のバングラデシュ政変です。
この日、長年政権を率いてきたシェイク・ハシナ首相が失脚し、その後インドへ渡りました。
この出来事以降、両国関係の雰囲気は明らかに変化したと指摘されています。国境問題に加え、
など、複数の分野で摩擦が見られるようになりました。
一部の分析では、政権交代後の政治環境の中で、バングラデシュの国境当局がゼロラインや領土問題により強硬な姿勢を取るようになったとも指摘されています。
インドとバングラデシュの国境は約4,000キロ以上に及び、世界でも非常に長く複雑な陸上国境の一つです。巡回やフェンス、農地利用をめぐる小さなトラブルは、これまでも珍しくありませんでした。
しかし現在は、政治関係の緊張がその影響を大きくしています。
そのため、ソナルハットの銃撃報道やティンビガ回廊の竹の支柱問題のような局地的な出来事が、すぐに国家レベルの緊張へと拡大する状況になっているのです。