ただしロシア政府は包括的な損失データを公表しておらず、戦時の推計には不確実性が伴う。それでも多くの独立分析は、ロシア側の損失が極めて大きい点では一致している。
戦場での負荷を示すもう一つの指標が、領土獲得の速度の低下だ。
戦争研究所(ISW)の分析によれば、ロシア軍が2026年の最初の4カ月間に占領した面積は1日平均約2.9平方キロメートルだった。これは2025年の同時期の約9.76平方キロメートルから大幅に減少している。
また大きな損失の影響で、ドネツク州など主要攻勢軸の一部では作戦テンポを落とさざるを得ない状況になっている。ウクライナ側の防御や反撃も、ロシア軍の前進コストを押し上げていると分析されている。
2026年4月には、戦況を象徴する珍しい出来事も確認された。
分析によると、この月ロシア軍は約116平方キロメートルの支配地域を失い、戦域全体で純粋な領土損失となった。これは2024年8月にウクライナ軍がロシア・クルスク州に越境攻撃を行って以来、初めてのケースとされる。
面積自体は戦線全体から見れば限定的だが、これまで一部地域でロシア軍がゆっくりと前進していた流れを考えると、象徴的な変化と受け止められている。
同時期に、ウクライナ軍は2024年末以降で最も意味のある戦場成果をいくつか挙げている。
ISWの分析によれば、2026年冬から春にかけての反撃で複数の地域で領土を奪還し、期間によってはロシア軍が獲得した面積を上回る領土を取り戻したとされる。
これらの成果は戦略的突破というより局地的な戦術的成功だが、ウクライナが依然として前線の主導権を一部で争える能力を持つことを示している。
現在の戦局で最も大きな変化と見られているのが、ウクライナによるドローン戦略の拡大だ。
ウクライナは国産の空中・海上ドローンの生産を増やし、長距離攻撃の射程と規模、頻度を2026年に入ってから拡大させている。
攻撃対象にはロシア国内の石油施設、港湾、軍事施設が含まれ、レニングラード州やクラスノダール地方といった前線から遠く離れた地域も打撃を受けている。
同時に、前線に比較的近い地域では中距離ドローンやミサイルによる攻撃が増加しており、補給拠点、装備集積地、兵力配置を狙っている。分析では、これがロシア軍の攻勢能力を徐々に弱めている可能性があると指摘されている。
こうした攻撃は、前線の兵站網を圧迫すると同時に、戦争の影響をロシア本土の奥深くまで広げている。
これらの指標を個別に見れば、戦略バランスが決定的にウクライナ側へ傾いたと断定することはできない。ロシアは依然として兵力、砲兵、資源面で優位を持つとされる。
しかし、
といった複数の要素が同時に現れていることから、ロシアの消耗戦戦略にかかる負担は確実に増していると分析されている。
現実的な見方としては、戦争は依然として長期的な消耗戦の段階にあり続ける可能性が高い。ただしウクライナのドローン戦力と局地的反撃は、ロシアの攻勢維持コストを引き上げ、前線の勢いを鈍らせる要因になりつつある。