今回のシリーズA調達は、エル・ドラドの重心が「企業間(B2B)決済」へと大きく舵を切ったことを示している。同社が立ち上げた越境決済サービスは、ステーブルコインと法定通貨(フィアット)のチャネルを統合し、ラテンアメリカの越境決済市場、規模にして約1兆ドル、その推定6割をB2B取引が占める市場に狙いを定めている 。このサービスはすでに100社以上が導入しており、その多くが中国からの電気自動車(EV)輸入に活用している。これは、中国のEV輸出企業とラテンアメリカのバイヤーを結ぶ、成長著しい貿易回廊である
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エル・ドラドのB2B戦略で特筆すべきは、従来の銀行網が脆弱で割高になりがちな「域内回廊」に照準を合わせている点だ。資金調達の発表でも繰り返し言及されているのがブラジル・ボリビア間であり、貿易決済のコストと複雑さを劇的に下げる狙いがある 。
エル・ドラドのB2B決済サービスを技術面で支えるのが、Tempo(テンポ) だ。これは、グローバル決済大手のストライプ(Stripe)と暗号資産ベンチャーキャピタルのパラダイムが共同で育成した、大規模なステーブルコイン決済専用のレイヤー1ブロックチェーンである 。
Tempoは2025年9月にパラダイム共同創業者のマット・ファン(Matt Huang)氏が発表し、同年12月にパブリックテストネットを開始。そして2026年3月18日にメインネットを正式ローンチし、AIエージェントによる自律的な取引を可能にする「Machine Payments Protocol」も同時に公開した 。
パラダイムの発表によれば、Tempoはエンタープライズ規模の決済処理を想定し、毎秒10万件以上(10万+ TPS)の処理能力、サブセカンド(1秒未満)のファイナリティ、手数料のステーブルコイン建て支払いといった仕様を備える 。開発段階では、Visa、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、Shopify、Nubank、Revolutといった名だたる企業がデザインパートナーとして参画しており、新規ブロックチェーンの立ち上げとしては異例の厚みのある布陣である
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Tempoはその企業価値でもインパクトを残している。2025年10月には、グリーンオークス(Greenoaks)とスライブ・キャピタル(Thrive Capital)主導で5億ドルのシリーズAラウンドを調達し、評価額は50億ドルに達した。セコイア(Sequoia)やリビット・キャピタル(Ribbit Capital)なども参加している 。パラダイムのマット・ファン氏は、ストライプの取締役を兼務しながら、引き続きTempoのCEOとしてチームを率いている
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100万人のリテールユーザーを抱え、中国からのEV輸入という確固たるB2B商流を確立したエル・ドラドは、今まさに二つの巨大なトレンドの交差点に立っている。それは、Tempoに象徴される「ステーブルコイン・インフラの制度化」と、ラテンアメリカに根強い「より安く、速く」を求める越境決済への渇望だ。