TSMCの株価最高値は、市場からの「価格決定力」への強い信頼感をも反映しています。株価が高値を記録したのと同じ日、TSMCが2026年下半期に3nmプロセスの製造受託価格を最大15%引き上げ、2027年にもさらに5〜10%の追加値上げを計画していると複数のメディアが報じました 。その需要の原動力は明白です。エヌビディアを筆頭に、GoogleやAWSといった大手クラウド事業者が次世代AIサーバー向けに3nmチップの採用を加速させており、供給能力の拡大が続いているにもかかわらず、品不足は2027年まで続くと見られています
。
これは突然の方針転換ではありません。TSMCは2025年末頃から、5nm以下の先端ノードにおいて複数年にわたる価格改定戦略を示唆しており、2026年1月にはすでに平均3〜5%の値上げが実施されています 。今回の3nmに関する発表がこれほど強力なインパクトを持つ理由は、その規模にあります。AI投資のスーパーサイクルの中で、顧客に代替手段がほとんどない状況下での、単一ノードで最大15%もの値上げだからです。現在、3nmプロセスのウェハ1枚の価格は約2万ドル(約300万円)とされ、2nmプロセスは量産開始時に1枚3万ドル(約450万円)を超えると予想されており、先端チップのコスト曲線そのものが一段高い水準へとシフトしているのです
。
株価最高値の直前、TSMCにとっては異例ともいえる、三つ目の触媒がありました。従業員による社内不満の高まりが表面化したのです。2026年5月下旬、TSMCが社員の業績給与(ボーナス)を最大15%削減する計画があるという噂がSNSや社内掲示板で拡散し、一部の従業員からは韓国のサムスン電子の事例にならいストライキを求める声も上がりました 。
この事態に対し、C.C.ウェイ会長兼CEOは迅速かつ断固たる対応を見せました。5月27日午前、予定されていた業務をすべてキャンセルし、社員との緊急説明会を開催。その場でボーナス削減の憶測を明確に否定し、第1四半期の利益分配金は前年同期比で約30%増加する見込みであること、ボーナスに上限は一切ないこと、そして2023年以降、年間のボーナスは毎年30%以上増加し続けているという事実を強調したのです 。複数の独立した情報源も、「30%超」という増加率と、今年もその高い成長率を維持する意向を確認しています
。個人の業績や等級により異なるこれらの支給金は、5月29日に支払われる予定です
。危機の芽に対して具体的かつ巨額のコミットメントを示すことで、経営陣はAIによる収益急拡大への強い自信を市場と社内に同時に示した形です。
TSMCの株価上昇は、国としての大きなマイルストーン達成にも貢献しました。台湾の株式市場において、TSMCの時価総額は全体の約1.8兆ドルを占める圧倒的な存在です。そのTSMCの株価上昇に牽引され、台湾市場全体の時価総額がインド市場を上回り、世界で5番目に大きな株式市場へと浮上したのです 。一部で報じられた時価総額4.95兆ドルという具体的な数字は、この記事では独自に検証できていませんが、この順位変動とTSMCの果たした役割の大きさについては、幅広く認識されています。
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