シャオミの公式料金ページでは、各モデルに「キャッシュヒット(過去に処理した内容の再利用)」「キャッシュミス(新規処理)」「出力」という3つの課金区分が設けられており、単位は100万トークンあたりで表示される 。海外向けのMiMo-V2.5 Proの新価格は以下の通り。
一方、無印のMiMo-V2.5はさらに低価格に設定されている。
「99%値下げ」というインパクトのある数字は、特にキャッシュヒット時の料金に顕著に表れている。多くの本番運用では、同じシステムプロンプト(AIへの初期指示)やドキュメントの冒頭部分を繰り返し利用する。キャッシュを最大限活用する設計にできれば、開発者のコストは劇的に低下する 。Hacker Newsのユーザーは「旧価格で約400ドルかかっていた処理が、改定後は約40ドルになる」と試算している
。
複数の情報源が指摘するように、MiMo-V2.5 Proのキャッシュミス時の新価格0.435ドルは、ディープシークV4 Proの現在のプロモーション価格と完全に一致する 。ディープシークは2026年5月31日までの期間限定で75%引きキャンペーンを実施しており、その価格は入力0.435ドル、出力0.87ドルだ
。このキャンペーン終了後、V4 Proの標準価格は入力1.74ドル、出力3.48ドルに戻る予定である
。
ディープシークはこの他に、より低価格な「V4 Flash」も提供しており、キャッシュミス時の入力は0.14ドル、出力は0.28ドル。この価格帯はMiMo-V2.5の無印モデルと競合する 。両モデルとも100万トークンのコンテキストウィンドウと、1リクエストあたり最大38万4000トークンの出力をサポートする点は共通している
。
2026年5月下旬時点で、中国発の最先端モデルAPIとしては、MiMo-V2.5 ProとディープシークV4 Proはほぼ互角の価格と言っていい。決定的な違いは、シャオミの価格が「恒久的」であり期限が設定されていないのに対し、ディープシークのプロモーション価格は5月31日までという点だ 。
ディープシークの低価格戦略の背景には、明確なエンジニアリング上の理由がある。DeepSeek V4は国産のHuawei Ascend 950チップ上での動作に最適化されており、これがOpenAIやAnthropicといった海外の有力モデルと比較して桁違いに安いAPI価格を実現した要因だ 。Counterpoint Researchの副社長Neil Shah氏はこの価格設定を「推論コストにおける真の『力の誇示』」と表現し、主席アナリストのWei Sun氏はV4について「大幅に低いコストで優れたエージェント能力を提供している」と評している
。
一方、シャオミの公式発表では、値下げの理由を「技術的配当」を開発者に還元し、課金体系の最適化によって利用コストを下げることだと説明している。特に、コンテキスト長による価格差をなくした点が強調されている 。シャオミ自身がチップ最適化や推論効率に関する詳細な技術情報をディープシークと同レベルで開示しているわけではないが、APIコストで真っ向から勝負に出ていることは明らかだ
。
シャオミとディープシークが価格を下げる一方で、中国の主要AI企業の一部は2026年初頭から明確な値上げ路線を取っている。
最も顕著なのが智譜AI(Zhipu AI)だ。同社は2026年第1四半期にAPI価格を83%引き上げた。これは2月の30%値上げ、4月の10%値上げに続く、矢継ぎ早の価格改定だった 。驚くべきことに、値上げにもかかわらずAPIの利用量は減少どころか、複数の情報源によれば約400%も急増している
。CEOの張鵬(Zhang Peng)氏は「高いコストパフォーマンスとは、単なる消耗戦的な価格競争ではない」と強調している
。
また、Kimiチャットで知られるMoonshot AIも、4月下旬の新モデルK2.6発表時にAPI入力トークン価格を0.60ドルから0.95ドルへと58%引き上げた 。同社の年間経常収益(ARR)は4月時点で2億ドルを突破しており、有料課金とAPI利用の急成長が背景にある
。テンセントクラウドも自社のAIモデル「Hunyuan」シリーズを400%以上値上げし、サードパーティモデル向けの無料ベータ提供を終了した
。
この価格戦略の分裂は、中国AI市場の構造的な分岐を反映している。高度な推論能力や商用製品に注力する企業は、需要の非弾力性(価格が上がっても需要が減りにくい性質)を追い風に収益化を進めている。一方、ディープシークやシャオミのような計算資源最適化型のプレイヤーは、低価格アクセスによって利用量と開発者エコシステムのシェア拡大を狙っているのだ 。
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