一方、中国で生産したシボレー車は海外市場向けに振り向けられます。中国で開発したビュイックやキャデラックの車両も、海外に輸出される可能性があります。現時点で示されている主な輸出先は、中東、アフリカ、南米、メキシコ、その他のアジア太平洋地域です。
つまりGMは、中国を「販売市場」と「生産・開発拠点」に分けて考え始めています。シボレーのショールームからは後退しても、中国での製造能力や技術基盤には、なお価値があるという判断です。
中国には、すでに大規模な工場、部品サプライヤー、エンジニアリング人材、品質管理の仕組みが整っています。自動車業界アナリストのイェール・チャン氏(Automotive Foresight)は、中国の工場について、品質を安定させやすく、生産コストも抑えられると指摘しています。
この輸出モデルなら、GMは中国国内の熾烈なEV競争だけに需要を依存せずに済みます。車両を中国で生産し、より販売余地のある海外で売ることで、「生産地」と「顧客のいる場所」を切り離せるためです。
この大きな需給ギャップが、輸出へ切り替える理由の一つです。工場やサプライヤー、開発拠点をすべて閉鎖すれば、これまで投じてきた設備や技術基盤を失うことになります。余剰能力の一部を輸出向けに転用できれば、稼働率を改善しながら中国国内の販売事業を再編できます。
もちろん、輸出には輸送費、関税、各国の規制、地域ごとに異なる需要といった課題があります。それでも、設備を遊休状態にしたまま維持することにもコストがかかるため、海外販売に活路を求める合理性はあります。
GMの判断は、外国自動車メーカーが中国で共通して抱える難しさの一例です。中国メーカーは価格競争だけでなく、車載ソフトウエア、バッテリー技術、中国市場向けの商品開発でも存在感を高めています。外国ブランドが過去の市場環境を前提に作った商品ラインアップは、短期間で時代遅れになる可能性があります。
実際、スズキは2018年に中国の合弁事業を終了。ルノーは2020年に中国での乗用車生産から撤退し、2022年にはアキュラとGACフィアット・クライスラーが現地生産を停止、三菱自動車も2023年に中国での国内生産を停止しました。
外国ブランドにとって問題なのは、単に選択肢が増えたことではありません。中国メーカーは、価格、ソフトウエア、電動化技術、現地ニーズへの対応で、より速く動ける場合があります。
中国のパートナー企業、車両プラットフォーム、部品サプライチェーンと密接に連携し、中国のEV市場に特化した車両を開発する方法です。フォルクスワーゲン、トヨタ、日産などが、この方向の取り組みを進めているとされています。
この戦略では、中国側のチームやパートナーが商品開発、技術、調達に大きな影響を持つことになります。中国市場で直接競争できる可能性がある一方、競争が最も激しい市場に正面から向き合わなければなりません。
このモデルの例として挙げられるのが、起亜自動車と中国企業の合弁会社である悦達起亜(ユエダ・キア)です。同社は2018年以降、江蘇省塩城の工場から58万2,000台超を輸出し、2024年と2025年にはいずれも年間輸出台数が17万台を上回りました。中国で生産したモデルの一部は、起亜の本国である韓国にも輸出されています。
GMの今回の決定は、中国を完全に見限る動きではありません。シボレーにとっては厳しい小売市場からの撤退ですが、GM全体にとって中国は、製造、技術開発、海外輸出を担う拠点として残ります。
SAIC-GMとの協力を2047年まで延長したことで、この方針には長い時間軸が与えられました。今後の焦点は、ビュイックとキャデラックが新エネルギー車で中国国内の勢いを取り戻せるか、海外輸出で余剰生産能力を吸収できるか、そして中国での生産優位性を世界で競争力のある商品に変えられるかです。
現時点でシボレーの中国販売終了は、GMによる中国からの全面撤退ではありません。中国での「売り方」を諦める代わりに、中国を「作って輸出する場所」へと位置づけ直す、事業モデルの転換と見るのが適切です。