問題となっているのは、通常の電動式ドア操作が使えない場合に備えた、車内の機械式緊急ドア開放レバーだ。大きな衝突や電気系統の故障で電源が失われた場合、乗員や救助者がレバーの位置を把握しにくく、操作にも手間取る可能性がある。その結果、脱出や救助が遅れるおそれがある。
対策には、レバーの位置を示す警告ラベルの追加と、衝突後に窓を下げるOTAアップデートが含まれる。つまり今回の問題は、テスラが普及させた車外のフラッシュドアハンドルだけを対象にしたものではない。また、輸入車のModel 3、Model S、Model Xだけに限られるわけでもなく、中国生産車やModel Yも対象に含まれる。
6月には、中国の一部テスラ運転者が、車内カメラを欺くために、バックミラー付近へ小さなプラスチック製の人形の頭部や著名人のフィギュアを置いていると報じられた。俳優ドウェイン・ジョンソンの姿を模したものもあったという。
こうした報道は、カメラによる注意監視が、検知ルール次第では実在の運転者と視覚的な物体を区別できない可能性を示している。ただし、今回確認できる資料だけでは、これらのフィギュアによる回避行為がSAMRのリコール命令の正式な発端だったとは断定できない。
公表されている対策は、フィギュアの存在を根拠にしたものではなく、従来のトルク検知に視線追跡を組み合わせることだ。カメラ監視を強化する一方で、レベル2運転支援が運転者の継続的な監視を必要とする点は変わらない。
今回の大きな数字は、1つの欠陥で全車両が対象になったことを意味しない。内訳は次の通りだ。
2つを単純に足すと約572万台分になる。しかし、両キャンペーンにはModel 3とModel Yの対象車が重なるため、これは実際の車両所有者数や固有の車両台数ではない。それでも、提供された報道の範囲では、中国市場におけるテスラのリコールとして最大規模の合計対応となる。
2つの対応は、対象となる安全場面が異なる。運転監視の更新は、運転支援機能を利用している最中に、運転者が前方を見ているかを確認する仕組みを強化するものだ。一方、ドア開放の対応は、衝突や電源喪失の後に、乗員や救助者が脱出手段を見つけて操作できるようにすることを目的としている。
したがって、どちらも単なる表示変更や一般的なソフトウェア更新とは言い切れない。一方は、運転者が注意を払っているかを車両が判断する方法を変え、もう一方は、緊急時に必要となる手動操作を見つけやすくし、衝突後の窓の動作も補う。実際にどの対策が必要かは、車両の生産地、モデル、製造時期によって異なるため、所有車がどのキャンペーンの対象かを確認する必要がある。