2023年のロードマップは、「The Merge(マージ)」「The Surge(サージ)」「The Scourge(スカージ)」「The Verge(ヴァージ)」「The Purge(パージ)」「The Splurge(スプラージ)」という6つの緩やかな柱で構成されていました。Strawmapはこれらを、2020年代終了までに達成すべき5つの定量目標「North Stars(北極星)」に置き換えました。
これらは単なる漠然とした目標ではなく、ロードマップは特定のアップグレードフォークと暗号学的マイルストーンを各目標に紐づけています。
Strawmapは、2026年から2029年にかけて、約6ヶ月に1回のペースで7回のハードフォーク(Hard Fork)を計画しています。
| アップグレード名 | 目標時期 | 主要な変更内容 |
|---|---|---|
| Fusaka(フサカ) | 2025年12月3日(完了) | PeerDAS、EOF、EIP-7702 |
| Glamsterdam(グラムステルダム) | 2026年第4四半期 | ePBS(EIP-7732)、ガスリミット引き上げ(フォーク後200ミリオン目標)、L1スケーリング基盤 |
| Hegotá(ヘゴタ) | 2027年 | FOCIL(検閲耐性)、バイナリ状態ツリー移行(EIP-7864) |
| (名称未定の4フォーク) | 2027–2029年 | 量子暗号の有効化、ネイティブロールアップ、プライバシー・プリミティブ、EVM置き換えの可能性 |
Hegotá以降のフォークの正確な名称と日程は未確定であり、Ethereum FoundationはStrawmapを「確定スケジュールではなくスケッチ(草案)」と位置づけています。
量子耐性は、2023年の「監視と研究」案件から、最優先課題へと急浮上しました。Buterinは「量子安全性の優先順位が大幅に引き上げられた」と明言しています。Strawmapは、既存のすべての楕円曲線署名(ECDSA、BLS)を量子耐性の代替方式に置き換えるため、3つの具体的な暗号スキームを指定しています。
これは、プロトコルとロールアップのデータストレージ全体にわたる完全な暗号再設計を意味し、コアインフラストラクチャのマイルストーンは2029年頃の完了を目標としています。Buterinは2026年6月、ポスト量子署名フレームワークを規定するEIP-8288を提案しました。
強力なプライバシーは、周辺的な関心事ではなく「コア要件」となりました。ButerinとEthereum Foundationはこれを「First-Class(第一級)のプロトコル目標」と位置づけています。Strawmapは、プライバシー機構をレイヤー1に直接統合します。これには、ビルトインのステルスアドレス(Stealth Addresses)、プライバシー保護型トランザクションプール(プライバシープール)、そして「Wormhole(ワームホール)」と呼ばれる設計によるプロトコルレベルのプライベート転送が含まれます。これにより、ユーザーは取引履歴全体を公開せずに価値を移動できます。
大規模再編の一環として、Ethereum Foundationは2026年6月、独立していた「Privacy and Scaling Explorations(PSE)」ラボを閉鎖し、その業務をコアプロトコル開発に統合しました。
「ネイティブロールアップ(Native Rollups)」は2023年のロードマップには存在せず、新たに追加された重要な要素です。Strawmapが想定するロールアップは、もはやサードパーティチームが運営する独立したL2プロジェクトではなく、プロトコルによって強制される実行環境です。これにより、ロールアップエコシステム全体で約1,000万TPSを達成する**Teragas L2(テラガスL2)**目標が可能になります。ネイティブロールアップは、L1とL2間のトラストミニマイゼーション(信頼最小化)を強化し、外部シーケンサーへの依存を低減します。Buterinは「2023年当時、SNARK技術はこれを検討するのにすら全く成熟していなかった」と述べています。
2023年のロードマップで注目されていたいくつかの項目は、優先度が下げられるか、完全に削除されました。
Strawmapは、Ethereum Virtual Machine(EVM)を超えた未来を明確に計画しています。実行環境としてEVMを置き換えるか補完するために、2つの候補が検討されています。
バイナリ状態ツリーの全面見直し(EIP-7864)は、EVM置き換えの前提条件と見なされています。これは、現行のPatricia-Merkle Trie(パトリシア・マークル・トライ)構造が実行レイヤーの革新を制限しているためです。Buterinは理想的な最終状態として、EVMをコンパイルターゲット機能に格下げし、プロトコル層はRISC-VまたはleanISAのみを直接認識することを挙げていますが、このステップは「まだ遠い未来」であると強調しています。
2023年のロードマップでは、ZK証明は複数の選択肢の一つとして扱われていました。Strawmapは再帰的STARKを唯一の信頼メカニズムとします。すなわち、すべてのノードがすべてのトランザクションを再実行するのではなく、各ノードは計算が正しく行われたことを示すコンパクトな再帰的証明を検証します。Buterinはこれを、再帰的STARKを「プロトコルのFirst-Classコアコンポーネントとして確立する」と表現しています。
**AI支援形式検証(AI-Assisted Formal Verification)**は、2023年以降に追加された真新しい要素です。Strawmapは、最新のAIツールを積極的に活用してプロトコルコードや暗号実装を形式検証することを明示的に求めています。これは、形式検証がこれまで高速なプロトコル開発のボトルネック(遅すぎてコストがかかる)であったという歴史的な問題に対処するものです。Buterinは、あらゆるものの完全な形式検証が「現代のAIのおかげでのみ可能になった」と述べています。
Strawmapは、組織的な動きと無関係ではありません。2026年6月23日、Ethereum Foundationは歴史上最も大規模な再編を発表しました。
この再編は、2026年3月に公開されたEFの更新された使命(Mandate)と2025年6月に採択された財務管理方針(Treasury Management Policy)に基づく数ヶ月にわたるプロセスの結果であり、The Merge以来最も攻撃的なアップグレードサイクルに突入するプロトコルを支えるための、よりスリムで集中した組織を目指すものです。