最初のきっかけは、米国防総省がドイツから約5,000人の米兵を撤退させる計画を示したことだった。これは欧州での米軍の配置(いわゆる「フォースポスチャー」)を見直す過程で決定されたもので、数か月かけて実施されるとされていた。
ドイツには欧州最大規模の米軍部隊が駐留し、欧州軍司令部(EUCOM)など主要な司令機能も置かれている。そのため、この削減計画はNATO同盟国の間で、米国の欧州防衛への関与が弱まるのではないかという懸念を呼んだ。
その後、国防総省はポーランドへの4,000人以上の米軍部隊ローテーションを突然取りやめた。対象となったのは、テキサス州フォートフッドを拠点とする第1騎兵師団・第2機甲旅団戦闘団で、9か月間の派遣が予定されていた部隊だった。
この措置は、欧州での兵力を削減する方針の一部と説明された。すでに駐留している部隊を撤退させるのではなく、新たなローテーションを止めることで兵力を減らすという方法が採られたとされる。
しかし、この決定は議会や軍内部にも十分に共有されていなかったと報じられ、突然の政策変更として批判を招いた。
混乱が広がる中、J・D・ヴァンス副大統領は、ポーランド派遣の停止は「中止ではなく一時的な延期」だと説明した。
記者会見でヴァンス氏は、政権はまだ最終的な配置先を決めておらず、部隊は欧州の別の場所に派遣される可能性もあると述べた。
この発言は、米政府内でも欧州の軍事配置がまだ流動的であることを示唆していた。
ところがその数日後、トランプ大統領はポーランドへ追加で5,000人の米兵を派遣すると発表した。これは、直前に停止された約4,000人規模の派遣計画よりも大きい規模だった。
トランプ氏はSNS投稿で、この決定がナブロツキ大統領の当選と自身の支持、そして両者の関係に基づくものだと明言した。
ポーランド政府は以前から、米軍のさらなる駐留拡大を望んでいた。特に、ドイツから米軍が削減されるなら、NATO東部の前線に近いポーランドへ移すべきだという主張をしていた。
ナブロツキ大統領の側近も、ドイツから撤退する米軍をポーランドに再配置する機会を「活用すべきだ」と公に発言していた。
今回の発表は、ポーランドにとって長年の目標である「米軍の東欧拠点化」に沿う動きともいえる。
短期間のうちに
・ドイツからの撤退計画
・ポーランド派遣の中止
・そして追加派遣の発表
という政策変更が続いたため、欧州の同盟国や専門家の間では米国の戦略がどこへ向かっているのか分かりにくいとの声が出ている。
当初は「欧州での米軍削減」が説明されていたが、ポーランドへの新たな派遣は単純な削減ではなく再配置の可能性を示しているためだ。
国防総省の欧州戦略レビューが続く中、いくつかの重要な点はまだ明確になっていない。
トランプ大統領のポーランドへの5,000人追加派遣は、
・欧州の米軍配置を見直す国防総省の検討
・突然の派遣中止に対する政治的圧力
・ポーランドのナブロツキ大統領との関係
といった複数の要因が重なって決まったとみられる。
ただし、欧州全体での米軍戦略はまだ見直しの途中にあり、この決定は最終的な結論というより、再編プロセスの一段階とみられている。