格下げの最大の理由は、サプライチェーン調査に基づく**「オールガラス筐体のiPhone 20 Pro」の開発中止にある。このモデルは2027年9月、初代iPhone発売20周年を記念するフラッグシップとして計画されていた。平均販売価格(ASP)は約2,600ドル**と見込まれ、高騰する部品コストを吸収するための高単価戦略の要と位置づけられていた。しかしジェフリーズは、工場での歩留まりが極めて低く、フレームレスのガラス筐体を量産できる品質に達しなかったとして、プロジェクトが中止されたと報告している。
これを受け、リー氏は2026~2031年度のiPhone ASP年平均成長率の予想を従来の**9%から6.8%に下方修正。2028年度と2029年度の1株当たり利益(EPS)予想もそれぞれ2.1%と3.4%**引き下げた。
ところが、この「中止報道」は8月11日になって大きく揺れている。Bloombergのマーク・ガーマン記者は、関係者の話としてAppleは依然として20周年記念モデル向けにガラス中心のデザインを追求中だと報じ、ジェフリーズの情報を真っ向から否定した。ガーマン氏によれば、来年のiPhone Proモデルには「glassy look」(ガラス質の外観)が採用される見通しだという。
現時点では、リー氏のサプライチェーン情報が「20周年リデザイン全体の中止」を捉えたのか、それとも「オールガラスディスプレイ部品固有の問題」に過ぎないのかは明確になっていない。Apple自体も正式なコメントを出しておらず、情報が錯綜した状態が続いている。
オールガラスiPhoneの成否を別にしても、Appleは深刻なコスト圧力に直面している。AIデータセンター向けの需要がメモリー市場を席巻した結果、2026年上期のDRAM契約価格は前期比で**93~98%**も急騰した。
ティム・クックCEOはこの状況を「100年に一度の洪水」(100-year flood)と表現し、MacとiPadの一部モデルで最大20%の値上げを実施。さらに、iPhoneへの価格転嫁は「不可避」と警告している。もしオールガラスiPhoneが計画通りに開発されていれば、その超高額な価格設定がコスト上昇を吸収する受け皿になったはずだが、その目途が立たなくなったことで、Appleの利益率圧迫リスクは一段と高まっている。
オールガラスモデルに代わる高単価戦略の柱として、Appleは初の折りたたみiPhone(iPhone 18 Fold)の投入を準備中だ。生産目標は2026年第4四半期に約1,000万台と報じられている。モルガン・スタンレーは、2027年までに折りたたみiPhoneが発売される確率を**89%**と試算し、強気シナリオでは目標株価を378ドルとしている。
ただし、ジェフリーズは折りたたみiPhoneの価格帯(256GBモデルで約2,199ドル、2TBモデルで最大3,099ドル)について、「オールガラスが担うはずだったプレミアムフラッグシップの代役としては不十分」と評価。新フォームファクターの投入だけではASP押し上げは困難と見ている。
そんな中、著名ベンチャーキャピタリストでApple強気派として知られるジーン・マンスター氏は、ジェフリーズの格下げを受けた市場の過剰反応を批判している。同氏はAppleの2026年度第3四半期(6月期)の売上高が前年同期比16%増の1,090億ドルに達し、9四半期連続で市場予想を上回った実績を指摘。サービス事業の拡大や折りたたみiPhoneの投入を強気継続の理由に挙げた。
ウォール街のコンセンサスはいまだ「モディレート・バイ」で、平均目標株価は約329ドル。ジェフリーズの「アンダーパフォーム」はその中で孤立した弱気スタンスとなっている。
さらに、CEO交代への不透明感も株価の重しとなっている。2011年からAppleを率いてきたティム・クック氏は、自身の退任が近いことを示唆。後任の最有力候補と見られているのが、Appleシリコンへの移行やiPhoneのデザインを統括してきたハードウェアエンジニアリング責任者のジョン・ターナス氏だ。正式な交代時期はまだ発表されていないが、長期的な製品ロードマップにさらなる不確実性をもたらしている。
結論: ジェフリーズの格下げは、①高単価フラッグシップの開発中止(ただしBloombergが異議)、②Appleが吸収しきれなくなったメモリーコストの高騰、③EPS成長の減速、④CEO交代リスク——これら複合要因が重なった結果だ。強気派は折りたたみiPhoneのモメンタムと25億台を超えるアクティブデバイスの基盤力を強調するが、ジェフリーズは株価が263ドル近辺まで下落すると予想している。