バークレイズも同様の見方を示しています。同行は2026年1月にASMLを「イコールウェイト」から「オーバーウェイト」に格上げし、目標株価を1,500ユーロに設定していましたが、今回の1,900ユーロへの引き上げは、生産能力の増強が計画通り進んでいるだけでなく、むしろ加速しているという自信の表れです。この裏付けとなっているのが、ドイツの光学機器サプライヤーであるカールツァイスとの緊密な協業による、製造上のボトルネック解消への取り組みです 。
ここで重要なのは、ASMLの収益は単純に出荷台数に比例して増えるわけではないという点です。CFOのロジャー・ダッセン氏は、急成長するインストールベースに対する高収益なサービスやアップグレード契約が、装置の出荷台数とは独立した複利的な追い風となると強調しています 。この収益層があることで、ASMLのビジネスは、単なる設備サプライヤーのモデルが抱えがちな市況変動リスクを緩和できるのです。
バンク・オブ・アメリカは、DRAM向け需要の前倒し(特にSKハイニックス向けの3台追加)を理由に、2026年のEUV出荷予想を61台から64台に引き上げました。2027年についても、予想を77台から81台へと上方修正し、通年の売上高予想を約470億ユーロと、コンセンサスである442億ユーロを約6%上回る水準に設定しています 。
他の金融機関もこれに追随しています。モルガン・スタンレーは、2027年のEUV需要が80台に達し、売上高が約468億ユーロに達すると予測していました 。一方、UBSは、次世代のEUV「Fプラットフォーム」が現行の「Eモデル」よりも13~18%高い生産性を実現し、ウエハ需要を満たすために必要な装置台数が減少する可能性があると指摘し、やや抑制的な75台という予測を出しました
。
ASMLの増産計画における物理的な制約は、サプライヤーの生産能力、具体的にはツァイスです。サプライチェーン調査によると、ツァイスは2027年にEUV用光学系の生産能力を前年比20~25%、単価の高い液浸DUV用光学系の能力を40~50%増強する計画です 。この並行的な増産がなければASMLの出荷目標は絵に描いた餅ですが、これが実行されれば、強気な見通しも現実味を帯びてきます。
ASML経営陣は、2026年の売上高の中間値を約365億ユーロから380億ユーロへと、4%引き上げました。360億~400億ユーロというレンジは、EUVの基本的な需要加速に加え、非EUVビジネスのポジティブな見通しも反映しています 。
2027年のコンセンサス予想は約442億ユーロですが、バンク・オブ・アメリカの470億ユーロという予測はこれを大きく上回っています。この差は、同行のより高いEUV出荷台数予測と、インストールベース管理収益が現在の市場予想モデルよりも速く複利的に拡大するという確信に起因しています 。
この収益成長は、出荷量だけが頼みの綱ではありません。より高度な装置の平均販売価格(ASP)の上昇、高収益なEUV製品へのシフト、そして拡大する既存装置群に対する継続的なサービス契約といった複数の要素が、たとえ出荷台数が多少変動したとしても、売上を押し上げるための複数のレバーとして機能するのです 。
ASMLは、TSMC、サムスン、インテル、SKハイニックス、マイクロンといった企業が製造するすべての先端AIチップに不可欠なEUVリソグラフィ技術で、事実上の独占状態にあります。このポジションが、2026年の半導体セクターにおいて、アナリストたちがASMLを「本命」視する理由です。
バーンスタインは、2026年の欧州半導体銘柄のトップピックにASMLを指名し、メモリー投資の加速、ロジック半導体需要の底堅さ、そして株価が一定期間もみ合った後の魅力的なバリュエーションをその理由に挙げました 。また、バンク・オブ・アメリカもASMLを「2026年に投資すべき25銘柄」の一つに選出し、AIインフラ構築における「クリティカル・イネーブラー(不可欠な実現要因)」と表現しました
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強気の見方を支えるのが業界全体のコンセンサスです。2025年後半時点で、ウォール街のアナリストの評価は「中程度の買い」であり、強い買いが4、買いが16、保持が7、平均目標株価は1,093ドルでした。この水準は、2026年に入ってからの新たな目標株価によって、その後急激に引き上げられています 。
目先の楽観論の一方で、重要な構造的リスクが視野に入っています。ASMLの次の主要な成長プラットフォームであるHigh NA EUVは、TSMCが開示した導入スケジュールに基づくと、本格的な量産段階に入るのは2028年以降と見られています 。
このタイムラグは、2027年から2028年にかけての過渡期に、ASMLの成長率が半導体製造装置セクターの同業他社に後れを取る可能性を示唆しています。この点は、強気の投資判断を維持するアナリストたちでさえも指摘するリスクです 。
このボトルネックは「需要不足」ではありません。顧客は喉から手が出るほど装置を欲しています。問題はASML自身によるHigh NAシステムの生産能力増強にあり、それがサプライヤーの準備状況によって制約を受けているという点です 。市場が今、低NA EUVの急増を価格に織り込んでいるからこそ、ASMLが次世代技術を計画通りに提供できるかどうか、そのタイムリミットはすでに刻一刻と迫っているのです。
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