出資者リストはそれをはるかに超え、新規と既存の投資家が混在することで、強固な機関投資家の信頼感を浮き彫りにしています。新規参加者には、アルタ・パーク・キャピタル、アンチ・ファンド、ボックスグループ、ラックス・キャピタル、ピークXVパートナーズに加え、フォード・モーターのエグゼクティブ・チェアマンであるビル・フォード氏も名を連ねています 。
ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、ミスリル・キャピタル、カプリコーン・テクノロジー・インパクト・ファンズ、ダスティン・モスコヴィッツ氏(グッド・ベンチャーズ財団を通じて)、そして匿名の大学基金といった既存の出資者たちも、今回のラウンドで投資を上乗せしました 。ヘリオンが2025年1月に調達した4億2500万ドルの前回ラウンドも、マイクロソフトとの商業契約と密接に結びついていました
。このような一貫した評価額の上昇傾向は、同社のコア技術を取り巻く科学的な不確実性とは、極めて対照的なものです。
調達した新たな資金の主な使途は、ワシントン州マラガに建設中の同社初の商用核融合発電所「オリオン」の建設を加速させることです 。現地では2025年7月に着工しており、この発電所は、マイクロソフトとの歴史的な電力購入契約(PPA)を物理的に具現化するものです。
この契約に基づき、ヘリオンは遅くとも2028年までに、ワシントン州中部にあるマイクロソフトのデータセンターへ、最低50メガワットのクリーンな核融合電力を供給することを約束しています。期限内に達成できなければ、スタートアップ側にペナルティが課される厳しい条件付きです 。このPPAは、単に核融合を「実証」するだけでなく、それをわずか2年以内に信頼性の高い、電力網に接続された電源に仕立て上げなければならないという、並外れた商業的プレッシャーをヘリオンに課しています。シリーズGの調達金は、まさにこの製造能力の拡大と商用電力の供給を支えるために確保されています
。
巨大な国際プロジェクトITERや、ライバルであるコモンウェルス・フュージョン・システムズなど、他のほぼすべての核融合の取り組みとヘリオンを一線を画すのが、その発電方法です。同社は、従来の蒸気タービンを完全に省略するパルス型の「磁化標的核融合(MTF)」システムを採用しています。
石炭、ガス、原子力発電、そして他の多くの核融合炉の構想では、エネルギーで水を加熱して蒸気に変え、その蒸気でタービンを回して発電しますが、この変換プロセスでは大きなエネルギー損失が発生します 。ヘリオンの設計は根本的に異なります。同社の炉は、プラズマのコンパクトなリングを2つ、磁場の中で猛烈な速度で衝突させます
。核融合反応を終えてプラズマが膨張する際、その動きが炉の磁束を変化させます。ファラデーの電磁誘導の法則に従い、この磁束の変化が装置のコイルに電流を誘起し、それがそのまま電力として直接取り出されるのです
。
同社は公式FAQで、「電気自動車の回生ブレーキのように、我々のシステムは未使用のエネルギーと新たに生み出された電磁エネルギーをすべて効率的に回収するよう作られています」と説明しています 。この「ダイレクトエネルギー回収」は、正味95%以上の効率を主張しており、これは従来の蒸気タービン式が30~40%程度であるのとは対照的です
。ヘリオンが開発した第7世代の試験機「ポラリス」は、このプロセスから正味の電力を初めて実証するために設計されており、最近では、太陽の中心温度の10倍にあたる摂氏1億5000万度超という記録的なプラズマ温度を達成しています
。
こうした技術的なマイルストーンにもかかわらず、ヘリオンの開発スケジュールには科学的な懐疑論がつきまといます。一部の核融合専門家は、同社の手法が本当に成立するのか疑問を呈しています。その理由の一つは、同社が科学論文などの査読付き学術誌への発表頻度が低く、第三者による厳密で独立した検証が難しいことにあります 。現時点では、ヘリオンの実験炉を含め、商用グリッドに必要な規模での正味発電を実証した炉は一つも存在しません
。
CEOのデビッド・カートリー氏は、「稼働する商用発電所こそが、最終的かつ唯一の証明になる」と、この批判に反論しています 。比較として、トカマク方式を採用するライバルのコモンウェルス・フュージョン・システムズは最近、自社の物理理論を検証する5本の査読付き論文を発表し、その信頼性をアピールしました
。
ヘリオンの巨額調達は、核融合への資金流入がかつてないほど高まっている中で行われました。数日前には、ドイツのレーザー核融合スタートアップ、フォーカスト・エナジーがシリーズAで史上最大の2億4000万ドルを調達し、同じ週には、ステラレーター方式のジーア・エナジーも1億ドルのシリーズBを発表しています 。2026年に入ってからの他の大きな動きとしては、慣性閉じ込め方式のイナーシャ・エンタープライズがシリーズAで4億5000万ドルを調達したほか、ビル・ゲイツが出資するタイプ・ワン・エナジーが、評価額約90億ドルを目指すシリーズBに先立ち、8700万ドルの転換社債を発行しています
。また、米国政府機関ARPA-Eも、2026年4月に同機関史上最大となる1億3500万ドルの集中投資を核融合分野に実行しました
。
これら新規の核融合投資のほぼ全てに通底するのが、AI業界の膨大な電力需要というテーマです。高度なAIモデルを学習・運用するためのデータセンターがギガワット級の巨大キャンパスへと成長するにつれ、テクノロジー企業は、風力や太陽光のような間欠性の問題がなく、二酸化炭素を排出せず、24時間365日稼働可能な電源を、死活的な課題として必要としています 。核融合は、この要件に完璧に合致する可能性を秘めています。ほぼ無尽蔵で、常時稼働し、ゼロカーボンのベースロード電源になり得るのです。
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