論点3:「公共広場」ではなく、コミュニティ主導の空間へ
ワンは、BlueskyはThreadsやXのような存在を目指しているわけではなく、単一のアルゴリズムフィードではなく、個々のコミュニティが主体となる空間に未来を見据えていると語る。プロトコルにより、誰もが独自のモデレーション、キュレーション、フィードアルゴリズムを運用できる。つまり、プラットフォームの支配力を「アンバンドル(分解)」するのだ。
ジェイ・グレイバー、CEOから最高イノベーション責任者へ
2026年3月9日、Blueskyの創業者ジェイ・グレイバー(Jay Graber)はCEOを退任し、**最高イノベーション責任者(Chief Innovation Officer)**に移行すると発表した。彼女は「Blueskyが成熟するにつれ、スケーリングと実行に集中できる経験豊富な経営者が必要だ。私は自分が最も得意とすること、つまり構築に戻る」と述べている。グレイバーは引き続き取締役会長を務める
。彼女はBlueskyを約4300万人のユーザーに成長させ、ATプロトコルをゼロから構築した立役者である
。
トニ・シュナイダーの使命
シュナイダーは、WordPressやTumblrを運営するAutomatticの創業CEOであり、2026年3月から暫定CEOを務め、同年7月10日に常任CEOに正式就任した。彼のバックグラウンドは極めて重要だ。彼はオープンソースエコシステム(WordPressはウェブの約40%を支える)をスケールさせた経験を持ち、プロトコル主導の成長と商業的実現可能性の間の緊張関係を熟知している。就任発表の中でシュナイダーは、「人々がコミュニケーションし、交流し、生計を立てる多様な方法を反映するオープンネットワーク」を構築していると述べた
。彼の使命は、Blueskyを急成長するオルタナティブから、持続可能でスケールされたビジネスへと導くことだ。
ローズ・ワン:人間同士の繋がりを重視するテーゼ
ワンは、既存大手SNSとの差別化において最も鋭い発言を続けてきた。2026年6月のSXSWロンドンでは、FacebookとXは「本来の目的を放棄した」と批判し、「AIが人間らしさを奪っている」と警告。インターネットが「自動化システムに過度に依存」し、真の人間的交流が軽視されていると指摘した。彼女はBlueskyをその対極に位置づける。アルゴリズムによる増幅はデフォルトではなくオプトインであり、人間同士の繋がりのために設計された場だ。このメッセージがDisruptのセッションの中核となる
。
Blueskyの既存大手に対する戦略は、以下の3つの明確な優位性に基づく。
ただし、大きな注意点がある。Blueskyのアクティブユーザー数は、2024年の米国大統領選挙後の急成長が収束するにつれ減少している。2026年8月のデータによると、プラットフォームはXからの離脱ラッシュで得た勢いを維持するのに苦戦している。プロトコルファーストのテーゼは、大規模なスケールではまだ証明されていない。Blueskyはオープンエコシステムの典型的な「コールドスタート問題」に直面している。ATプロトコル上に構築された魅力的なアプリやサービスはまだ少ない。したがって、今回のDisruptのセッションは、哲学的な議論を展開する場であると同時に、開発者や投資家の信頼を集めるための場でもある。