エージェンティックポッドとは、AIに精通したエンジニア1名と、業務部門(ファイナンス、法務、マーケティング、人事、カスタマーサポート、調達など)のドメインエキスパート1名をペアにした、少人数(2名)のチームのことだ。このチームには、厳格な2週間のスプリントが与えられ、手動のワークフローを観察し、AIエージェントで再構築する。ナガCTOは2026年半ばにこのプログラムを開始し、約30のポッドを、2ヶ月間で16の業務機能に展開した
。
この厳格な期限は偶然ではない。チームに「いつまでも磨き続けるのではなく、実際に動くものを出す」ことを強制するためだ。ナガCTOが述べたように、その目標は「AIを高価な実験として扱うのをやめ、複雑で手動のワークフローを再設計するために使い始めること」だった
。
| プロセス | 改善前 | 改善後 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| 資本配分分析(150都市分) | 15時間 | 30分 | 30倍 |
| 財務ペーシングレポート | 2日 | 10分 | 約288倍 |
| マーケティングWeb品質保証 | 2週間 | 約50分 | 約400倍 |
それ以前の戦略、いわゆる「トークンマキシング」は、支出重視のアプローチだった。Uberの約5,000人のエンジニアのうち、実に95%近くがClaude CodeやCursorといったツールを日常的に使用していた。しかし、同社はそのトークン消費と測定可能なビジネス成果を結びつけることができなかった。2026年5月、マクドナルドCOOは『Business Insider』に対し、AI支出の正当化が難しくなっていると述べ、「そのリンク(トークン使用と生産性の間)はまだ存在しない」と語った
。トークン使用量の増加は、消費者向け製品の比例的な改善にはつながっていなかったのだ
。
2つの戦略の主な違い:
エージェンティックポッドの構造は、トークンマキシングアプローチでは解決できなかった2つの問題を解決した。第一に、エンジニアが構築を始める前に問題をエンドツーエンドで理解することを強制し、定義されたアウトプットなしにトークンを消費することを防いだ。第二に、AI支出を測定可能なビジネス成果(節約された時間、加速されたレポート、排除されたワークフロー)に直接結びつけた。
わずか2ヶ月で、16のポッドが16の業務機能で稼働した。このモデルはその後拡大されている。ナガCTOが述べたように、ポッド導入後、Uberのエンジニアの99%がAIツールを使用している——しかし今や、その使用がビジネスで追跡可能な結果を生み出すための枠組みが存在するのだ
。
そもそもUberはなぜ、このような転換を迫られたのか。2026年初頭、同社はAIコーディングツールにお金を湯水のように使っていた。Claude Codeの利用は急増し、予算はあっという間に底をついた。だが、COOのマクドナルド氏は「トークンをたくさん使えば使うほど、優れた機能が生まれるわけではない」と認めざるを得なかった。社内外で「トークンマキシング」と呼ばれるこの現象は、AI投資のROIを測る明確な指標がないという、業界全体の課題を浮き彫りにした。
Uberの「エージェンティックポッド」が示した教訓はシンプルだ。AIの効果を最大化するには、まず現場の業務を深く理解すること。巨額の投資やツールの導入だけでは不十分で、「何を自動化すべきか」という視点と、それを実行に移す小さくて速いチームこそが鍵を握る。
15時間かかっていた財務分析が30分に。2日かかっていたレポートが10分に。この数字は、AIが本当に価値を発揮するのは、現場の課題に寄り添った時であることを如実に物語っている。