今回の外交的動きは、黒海での攻撃が急激に激化したことを受けたものである。フィダン氏は、当初は港や軍艦が標的とされていたものの、現在では無差別に「すべての商船」が攻撃されるようになったと指摘した 。最近では、トルコ船籍の船舶を含む民間船が攻撃を受けており、アンカラは国際海運の安全と、戦争が黒海全域に拡大するリスクに強い懸念を抱いている 。
トルコ自身も、特定の船舶についてボスポラス海峡とダーダネルス海峡の通過を制限する措置を取っている 。フィダン氏は「紛争は黒海全体に拡大している」と厳しい認識を示した 。
これはトルコの初めての黒海外交ではない。2022年以来、アンカラはNATO加盟国でありながら、両陣営との対話を維持する重要な役割を担ってきた。
今回のモラトリアム提案は、包括的な和平交渉の再開を目指すトルコのより広範な戦略のうち、海運に焦点を絞ったバージョンといえる 。フィダン氏は以前から、包括的な停戦が不可能であれば、海上保安とエネルギーインフラへの攻撃停止に限定した合意でも「被害を減らせる」と提案していた 。
ウクライナ:フィダン氏によれば、ウクライナ側はトルコの呼びかけに先立って同様の提案をすでに行っていた 。ゼレンスキー大統領はトルコの仲介努力を公に称賛し、アンカラの外交活動に感謝の意を表明。2026年7月のフィダン氏のキーウ訪問時には、功労勲章二等を授与している 。
ロシア:フィダン氏は、トルコがモスクワに正式に提案を伝えたと述べている 。2026年8月10日時点で、ロシア側からの正式な受諾または拒否の発表はない。フィダン氏はモスクワを訪問し、ロシア当局者と直接協議する予定である 。
このモラトリアム提案は、包括的な停戦が困難な状況下で、限定的な合意が可能かどうかを試す試金石となる。フィダン氏は両陣営に提案を説明済みであり、今後の外交——特にモスクワ訪問の結果——が、この取り組みが前進するか、先行する多くの和平努力と同じく頓挫するかの分かれ道となる。トルコはイスタンブール・フォーマットの復活も引き続き推進しているが、目前の優先課題は、民間人の命と国際海運ルートを危険にさらしている商船への攻撃を止めることである 。