ただし、過去のサイクルとの比較は欠かせない。ETH/BTC比率は2021年におよそ0.08まで上昇しており、0.02994はそのピークを約63%下回る。今回の上昇は方向転換を示す動きではあるが、イーサリアムが過去の相対的な強さを取り戻したことを意味する水準ではない。
リー氏は、イーサリアム固有のアプリケーションが追加需要を生み出した局面で、相対的なパフォーマンスが改善してきたと説明する。例として、2017~18年のICO(新規コイン公開)、2020~21年のNFT、そして近年のステーブルコインを挙げている。次の需要の波は、トークン化された証券と自律型AIになる可能性があり、過去より大きくなるとの主張だ。
リー氏の見方を企業戦略として最も明確に表しているのが、BitMineのETH保有方針だ。同社は8月16日時点で、5,815,164ETHを保有していると発表した。ETH価格を1,893ドルとして計算した評価額は約110億ドルで、公表されたETH供給量1億2,070万ETHの約4.8%に相当する。
BitMineによると、保有ETHのうち5,067,309ETH、約87%をステーキングしており、年間ベースのステーキング収益は約2億5,000万ドルになると見込んでいる。全保有分をステーキングするシナリオでは、年間収益を2億8,700万ドルと試算した。同社は2025年6月30日にこの戦略を開始して以来、毎週ETHを買い続けているとしているが、直近の買い増し規模は過去の一部の購入より小さかった。
リー氏の考えでは、これによりETH保有は単なる価格上昇への賭けではなくなる。将来、金融インフラとして重要になると見込むネットワークへの投資を続けながら、ステーキング収益も得られるためだ。
しかし、BitMineの買い集めは、イーサリアムを支持するリー氏が率いる企業の経営判断でもある。市場が同社の想定する規模でイーサリアムを採用することを独立に証明するものではなく、あくまで強い確信を示す材料と見るべきだろう。
この動きは、経営陣がBMNR株を割安と考えていることを示す可能性がある。ただし、株式の買い戻しとイーサリアムの投資仮説は分けて考える必要がある。自社株買いは企業の資本配分に関する判断であり、ETHに対する機関投資家の独立した需要や、トークン化・AIの普及を直接確認するものではない。
ETHは約1,893ドルで取引され、20日および50日の指数平滑移動平均線(EMA)を上回っていた。これは短期的な下支えを示唆する一方、約1,918ドルに位置する100日EMAは下回っていた。この水準は、上昇を何度も阻んできた抵抗線となっていた。
投資家がこの仮説を検討する際は、次の3つを区別すると分かりやすい。
リー氏は、イーサリアムを、よりプログラム可能な金融システムの決済レイヤーと見る。ウォール街による資産のトークン化と自律型AIが、次の大きなブロックチェーン利用を生み出すという考えだ。BitMineが報告した約581万ETHの保有は、この見方に対する企業としての大規模なコミットメントを示している。
ETH/BTC比率の上昇はこの主張を一部支えるが、0.02994は2021年の約0.08という水準を大きく下回る。採用拡大が持続的なネットワーク利用、より強い相対パフォーマンス、安定した機関投資家の資金流入へとつながるまでは、現時点の証拠が示すのは「十分にあり得るイーサリアムのシナリオ」であって、ETHがビットコインを上回るという確定的な結論ではない。