Squidのプラットフォームは、EVM、ソラナ、コスモス、ビットコイン、そしてXRP Ledger(XRPL)といった主要エコシステムにまたがる、単一のルーティングと実行のレイヤーとして機能します 。RLUSDの統合は、それまでステーブルコインを2つのネイティブチェーン内に閉じ込めていた、断片化された流動性と手動ブリッジの手間を解消します。
具体的なメリットは以下の3点です。
1. 流動性の統一:RLUSDは、各チェーンに個別の流動性プールを用意することなく、事実上あらゆるDeFiプロトコルや決済レールへと自由に流れ込めるようになりました 。これは、これまで「閉鎖的」と見られがちだったXRPLから見れば、大きなブレイクスルーです。
2. 機関投資家レベルのアクセス:WormholeのNTTフレームワークは、RLUSDを機関投資家のオン・オフランプや国際送金、トークン化に対応できるものにしました。今回のSquid統合はこれをさらに推し進め、リップルがまだ未開拓だったチェーン上での自動決済や、企業のステーブルコイン資産管理をも可能にします 。日本の金融機関が将来的に検討する際にも、特定チェーンの技術スタックに縛られない柔軟性は大きな強みとなります。
3. DeFiコンポーザビリティの解放:USDCやUSDT、ETH、XRPなどからRLUSDへワンクリックでスワップできることで、RLUSDはイーサリアムのメインネットを超えたネットワーク上の貸出プール、DEX、イールドプロトコルに直接参加できます 。これは、より高い利回りや多様な投資戦略を求めるユーザーにとって朗報です。
RLUSDの供給分布は、この変革の物語を雄弁に語っています。2026年6月中旬現在、総流通量は約16億3000万ドル。その内訳は、イーサリアム上に8億7900万ドル、XRP Ledger上に7億6000万ドルと、53対47のほぼ拮抗した比率になっています 。これは、わずか8か月前の状況からの劇的な逆転です。
このリバランスは自然に起こったのではありません。リップルによる積極的な介入の結果です。
大規模な供給バーン:2026年4月30日、リップルはXRPL上でRLUSDを1億2000万ドル分バーン(焼却)しました。これは、8500万ドルと3420万ドルという2回のトランザクションで構成された、同ステーブルコイン史上2番目に大きい1日あたりのネットバーンでした。これによりXRPLのフロートは2億5300万ドルまで一時的に減少しました 。短期的にはXRPLのシェアを減らすように見えますが、これは鋳造(ミント)とバーンのより大きなサイクルの一部であり、最終的に両チェーン間の影響力を行き来させる戦略的行動です
。
Wormhole経由のレイヤー2拡張:2026年6月、リップルはWormholeのNTT標準を利用して、Base、Optimism、Ink、Unichainといったイーサリアムのレイヤー2ネットワーク上にRLUSDをネイティブ展開しました。これらの環境からの需要が、ブリッジを通じて再びXRPLへと流れ込む構造を作り出すことで、単一チェーンへの集中ではなく、チェーン間の健全な循環を促しています 。
オムニチャネル・パートナーシップ:Squidとの統合は、特定のネットワークが持つ「重力」を弱めるオムニチェーン戦略の最も強力な例です。ユーザーが100以上のチェーンでRLUSDを取得または処分できるようになれば、イーサリアムのDeFi支配力は「必然」ではなく**「選択肢の一つ」**になります 。これは、日本発のパブリックチェーンであるAstar Networkのようなエコシステムが、固有の強みを活かしてRLUSDの新たな活用シーンを創出できる可能性も示唆しています。
当初、RLUSDの供給がイーサリアムに集中したのは偶然ではありません。機関投資家の取引相手や、貸出市場、DEXの流動性、イールドアグリゲーターといったコンポーザブルなDeFiインフラは、圧倒的にイーサリアム上に構築されているからです 。ステーブルコインが担保や取引ペアとして有用であるためには、「最も豊かなコンポーザビリティ」がある場所に存在する必要があります。リップル自身のトークンでさえ、そのターゲット層にリーチするために、イーサリアムのネットワーク効果に深く依存せざるを得なかったのです
。
これは、奇妙なダイナミクスを生み出しました。「供給」はイーサリアムが握り、「保有者」はXRPLが抱えているのです。2025年10月までに、RLUSDの36878人の保有者のうち85%以上がXRPL上にいたにもかかわらず、トークン供給の12%しかそこには存在しませんでした 。リップルのコミュニティと企業パートナーは主にネイティブ台帳に留まり、DeFiで運用される資本はイーサリアムで働いているという、機能分離が起きていたのです。
RLUSDの成長は流星の如くです。2024年12月のローンチ後、2025年初頭までに供給量は約1億800万ドルに達しました 。その後、2025年11月に10億ドルを突破
、2026年4月には14億ドルを超え
、現在は約16億3000万ドルに達しています。この約16か月で約15倍の増加は、2026年第1四半期末の1億2800万ドルのバーンを経て達成されたものです
。
結論:RLUSDの持つ二重チェーン構造——イーサリアムがDeFiのコンポーザビリティと供給を、XRPLが決済と保有者を担う——は、意図的なアーキテクチャ上の強みへと進化しました。Squidの統合はこの流れを加速させ、トークンを真の「オムニチェーン」にします。53対47という供給比率は、流動性にとって最も重要な場所でイーサリアムを活用しつつ、マルチチェーンの世界でXRP Ledgerの存在感を高め続けるという、リップルの戦略的努力を反映しています。この均衡は、苦労して勝ち取り、能動的に管理され、かつてないほど強固なものになっています。
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