タウ・スケーリング則を実現する具体的な技術が「LogicFolding」だ。
手の届かなくなったEUV露光装置を用いて平面的に回路を焼き付けるのではなく、論理回路を垂直に積み重ねる3D構造を採用する。このアプローチにより、成熟した既存の製造プロセスを使いながらも、トランジスタ密度を約55%向上させ、電力効率も改善できるとファーウェイは主張する 。ファーウェイは2031年までに、この手法で1.4nmプロセスに相当するトランジスタ密度を達成するという目標を掲げている
。
この理論を裏付ける数学的フレームワークは、何氏の署名入り論文『A Time Scaling Theory for Multi-Layer Electronic Systems』として、中国のプレプリントサーバー「ChinaXiv.org」でも公開された 。
この言葉は、ファーウェイの置かれた状況そのものを象徴している。もし、従来のムーアの法則に沿って微細化競争を続ければ、最先端のリソグラフィ装置へのアクセスが絶たれた時点で限界は明白だった。そこで、競争のルールを「システム全体の時間短縮」に変え、自らに有利な土俵へと引きずり込もうというわけだ。特にAIクラスターやデータセンター性能においては、個々のトランジスタよりもシステム全体の遅延(レイテンシ)の方が重要であり、同社はこの領域で勝機を見出している 。
2031年までに1.4nm相当の集積度を達成するという計画も、あくまで同社の社内予測であり、客観的なベンチマーク結果ではない。また、3Dロジック積層の商業化は、放熱や製造の複雑さといった観点から、業界全体が長年課題としてきた技術的難易度の高い分野だ。LogicFoldingがこれらの問題を大規模に克服できるのかどうかは、まさにこれからの課題である。
それでも、このタウ・スケーリング則の発表は、歴史的なマイルストーンであることは間違いない。中国の大手テクノロジー企業が、欧米主導で書かれてきた半導体の「ルールブック」に対し、自ら新たな指導原理を世界に向けて提案した初めてのケースだからだ 。
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