TeslaのFull Self-Driving(FSD)を欧州で使えるようにする話は、「ソフトウェア更新を配信すれば済む」という単純なものではありません。問題の中心は、FSD Supervisedが欧州のより細かな型式認証制度の中で、車両機能として認められるかどうかです。
提供された報道で一貫している焦点は、規制上の認証です。TeslaはFSD Supervisedについて、運転制御支援システムを対象とするUN Regulation 171(UN R-171)への適合を示し、現行ルールが十分に扱っていない挙動についてはArticle 39の例外承認が必要になる可能性があるとされています [12][
13]。
まず違うのは、欧州の「型式認証」という考え方
欧州の制度は、米国よりもルール先行型だと説明されています。ある報道は、米国では自動車メーカーが新しい運転支援機能を展開しつつ、事故データ報告や欠陥調査を続ける余地が比較的大きい一方、欧州では国連欧州経済委員会(UNECE)に連なる型式認証の枠組みによって、運転支援システムが何をしてよいか、どう振る舞うべきかがより細かく定められていると対比しています [1]。
この違いが、Teslaにとっての核心です。FSD Supervisedは単なるアプリや機能アップデートとして見られているのではなく、車両の走行挙動に関わる機能として審査されます。報道では、UN R-171がDriver Control Assistance Systems(運転制御支援システム)の主要な承認ルートとして挙げられ、Teslaは一部の挙動についてArticle 39の例外承認も求めているとされています [12][
13]。
FSDの挙動は、既存ルールに収まりきらない
難しいのは、どれか一つの機能だけではありません。FSD Supervisedが目指す複数の挙動が、もともとより限定的な運転支援システムを想定して作られたルールに収まるのか、という点です [1]。
報道によれば、Teslaの承認プロセスではUN R-171への適合を示すだけでなく、欧州で未規制、または制約が残る挙動について例外承認を申請する必要があります。例として挙げられているのは、ハンドルから手を離した状態でのシステム主導の車線変更や、現行ルールで十分に対象化されていない道路でのLevel 2運用です [13]。
過去のAutopilot制限を見ると、この問題の意味が分かりやすくなります。2026年の報道では、UN/ECE Regulation 79が2019年以降、欧州でのAutopilot機能を制限してきたとされ、車線変更のタイミング、カーブでのステアリング支援、横加速度、Summon機能の作動範囲などに具体的な制約があったと説明されています [4]。
つまり、ある市場で使える機能が、そのまま同じ挙動で欧州に持ち込めるとは限りません。欧州では「その機能が安全か」だけでなく、「その機能が規則上、どの分類に入り、どの条件で許されるのか」が問われます。
なぜオランダのRDWが重要なのか
Teslaの近い将来の欧州ルートは、オランダを経由する形で語られています。Electrekは2026年3月20日、Teslaがオランダの道路当局RDWとFSD Supervisedの最終車両テストを完了し、UN R-171承認に必要な書類を提出したと報じました [5]。別の報道も、UN R-171承認とArticle 39の例外承認に関する書類提出後、RDWが内部審査を進めているとしています [
12]。
RDWが注目されるのは、オランダでの承認が欧州全体への展開の入口になり得ると見られているためです。Teslaはオランダの承認当局RDWに依拠しており、報道ではオランダでの例外承認が、EU全域での利用に向けた最初の足がかりになり得ると説明されています [10][
13]。
ただし、タイムラインは確定していません。Electrekは2026年3月20日時点で、オランダでの承認予定日が3月20日から4月10日にずれ込み、EU全域でのより広い承認は夏まで見込まれていないと報じています [5]。本稿で参照している資料の範囲では、EU全域での承認がすでに完了したとは確認できません。
「国内承認」と「EU全域展開」は同じではない
オランダでの承認は大きな一歩になり得ますが、それだけでEU全域の問題がすべて解決するわけではありません。欧州の自動運転・運転支援をめぐる制度は、各国法とEUレベルの統治が重なる複雑な構造だと説明されています [2]。
ある報道は、オランダでのステップがEU内での相互承認につながることが期待されていると伝えていますが、それはあくまで今後の可能性として語られており、完了済みのEU全域展開としては示されていません [10]。
そのため、Teslaに求められているのは、デモ走行を成功させることだけではありません。関連するUNECE/EUの枠組みの下で規制当局が納得できる証拠をそろえ、仮に国内承認を得たとしても、それを欧州全体で通用する法的ルートへつなげる必要があります [5][
12][
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新しいUNECE規則は助けになるが、近道ではない
ルールそのものも変わりつつあります。2026年2月の報道によれば、UNECEの自動運転車両に関する作業部会は2026年1月23日、自動運転システムのための標準化された「Safety Case」枠組みを作る規則案を採択しました。対象は50を超える加盟国に及ぶとされています [6]。
同じ報道では、この規則が発効し得る最も早いタイミングは2026年6月の投票だとされています [6]。将来的には審査の道筋を分かりやすくする可能性がありますが、それによってTesla FSDが自動的に認められるわけではありません。この枠組みはTeslaだけでなく複数の自動車メーカーに関わるものであり、各社はなお安全性と承認要件を満たす必要があります [
6]。
結論:鍵は「配信」ではなく「認可」
Tesla FSD Supervisedの欧州展開を左右しているのは、単純なソフトウェア配信ではなく、規制当局による受け入れです。提供された報道に基づけば、TeslaはUN R-171への適合を示し、必要なArticle 39の例外承認を得て、オランダRDWの審査をより広い欧州承認への橋渡しにする必要があります [12][
13]。
その道筋が完了するまでは、FSD Supervisedは欧州でテストや書類審査が進んでいても、EU全域で正式に利用できる状態になったとは言えません [5]。




