その足跡は一直線ではありませんでした。
この前例のない投資家の食欲を一手に引き起こしたのが、ムーンショットのKimi K2.5モデルです。2026年1月下旬にリリースされたK2.5は、強力な視覚能力を持つオープンソースのマルチモーダルモデルであり、当時業界トップクラスのコーディングベンチマークを達成しました。例えば、SWE-bench Verifiedで76.8%、Humanity's Last Examで50.2%というスコアです 。
その商業的なインパクトは即時的かつ極端なものでした。Kimi K2.5は、リリースからわずか20日間で、ムーンショットAIが2025年通年で稼いだ総収益を上回る収益を生み出しました。この事実は、同社が有料サブスクリプションを開始したのが2025年9月であったことを考えると、さらに驚異的です 。3月までに年間経常収益(ARR)は1億ドルを突破し、4月には有料会員とAPI利用の急増により、2億ドル超へと倍増しました
。
このモデルの成功は、ムーンショットAIの収益の地理的構造をも根本から変えました。K2.5のリリース後、世界中の開発者がCursorやOpenRouterといったプラットフォームを通じて複雑なコーディングタスクにK2.5を採用した結果、2026年2月、同社の海外収益が初めて国内収益を上回りました 。リリースから数日のうちに、世界中の有料ユーザー数は4倍に膨れ上がったのです
。
ムーンショットAIの資金調達は、真空地帯で行われているわけではありません。中国のAIセクター全体が、歴史的な資金調達と株式市場ブームの真っただ中にあり、競争環境を塗り替えています。中国のAIモデル提供企業は、Xiaomi、Alibaba、Zhipu、DeepSeek、Moonshot、MiniMax、StepFun、ByteDance、Baidu、Tencentの約10社に集約され、これらが覇権を争っています 。
このうち、2026年に新規株式公開(IPO)を果たした中国のAI関連企業の85%以上が香港市場を選択し、AI企業のIPOラッシュが起きています 。その先陣を切ったZhipu AIは、2026年1月に「大規模モデルIPO」として5億5,800万ドルを調達し、その後株価は7倍に急騰しました
。MiniMaxも強い需要を背景に上場し、5月のある時点では、中国の主要な非公開AI研究所である「AI四天王」の時価総額合計が1兆人民元(約1400億ドル)を超えたと報じられています
。
こうしたIPO熱にもかかわらず、ムーンショットAIは今のところ非公開のままでいる道を選び、費用のかさむGPUインフラやモデル学習の資金として、Alibaba、Tencent、Meituanといった戦略的支援家から、より大きなラウンドを着実に調達しています 。同社は香港上場を検討していると述べていますが、短期的に急いで踏み切る考えはないとのことです
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