AI半導体の拡大に投資する方法として、AMDとASMLは対照的だ。AMDは、AI計算基盤をラック単位で提供する有力な代替サプライヤーを目指す。ASMLは、多くの最先端チップを製造するうえで必要となるリソグラフィー(露光)装置を供給する。
この違いは、時価総額1兆ドルへの道筋にも表れる。AMDはシェア獲得と利益成長を実証する必要があるのに対し、ASMLは技術的なボトルネックとしての地位を維持し、顧客が先端チップの生産能力を拡大し続けることが主な前提となる。
半導体「1兆ドル」到達の意味
半導体関連企業で時価総額1兆ドルを超える企業数は、日々の株価変動や「半導体関連」の定義によって変わる。直近の報道では、業界に直接関わる5社がこの水準を超えたとされる一方、SKハイニックスはその後に1兆ドルを下回ったとされた。広い意味で挙げられるのは、NVIDIA、TSMC、ブロードコム、マイクロン・テクノロジー、SKハイニックスだ。
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重要なのは、特定日時点の「1兆ドルクラブ」の顔ぶれではない。AIインフラの中核、すなわちAIアクセラレーター、ファウンドリー(半導体受託製造)能力、ネットワーク、メモリーに位置する企業に、株式市場が1兆ドル規模の評価を与えている点である。
AMD:AIシステムの採用拡大と利益成長に賭ける
AMDの投資ストーリーは、従来のPC需要サイクルよりも、データセンターへ急速に軸足を移している。2026年第2四半期の売上高は115億3,600万ドル、うちデータセンター部門は67億ドルで、前年同期比107%増だった。
35 EPYCサーバーCPUとInstinctアクセラレーターは、将来の期待だけでなく、すでに成長を牽引する事業になっていることを示す数字だ。
Heliosが重要な理由
Heliosは、Instinct MI455X GPU、第6世代EPYC CPU、Pensandoネットワーク、ROCmソフトウェアを統合したAMDのラックスケールAIシステムである。AMDは、競合の有力プラットフォーム比で「1ドル当たりの推論トークン数」が最大30%多いとしている。ただし、これは独立した第三者ベンチマークではなく、AMD自身による性能主張である。
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商業面で問われるのは、評価導入や発表済みのコミットメントが、反復性のある大規模導入へ転換するかどうかだ。Heliosについては、OpenAI、Anthropic、Meta、Microsoftとの取り組みが報じられている。AnthropicはMI450シリーズGPUを最大2ギガワット分導入する計画とされる。
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導入が本格化すれば、AMDは単体アクセラレーターにとどまらず、ラック単位の統合システムを通じて収益機会を広げられる可能性がある。
AMD経営陣は市場規模も非常に大きいと見ている。同社CFOは、AIチップの総潜在市場が2030年までに2兆~3兆ドルに達しうると述べた。ただし、これはAMD経営陣による市場見通しであり、業界全体のコンセンサス予想ではない。
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AMDが1兆ドルに到達するための条件
時価総額1兆ドルには、四半期ベースの高成長だけでは足りない。Heliosを採算性を保ちながら拡大し、競争力ある性能を維持し、供給を確保したうえで、NVIDIAからの乗り換えを現実的にするソフトウェアと顧客サポートを整える必要がある。
評価面のハードルも高い。発行済み株式数を約16億3,000万株とする試算では、AMDの時価総額が1兆ドルを上回るには株価が613ドル超になる。
47 また、EPS(1株当たり利益)が2.65ドルから15.61ドルへ伸び、予想PERが約66倍という見方もある。
37 これらの試算が示すのは、強気シナリオの中心が単なるバリュエーション倍率の上昇ではなく、大幅な利益拡大にあるということだ。
AMDはNVIDIAを完全に置き換える必要はない。しかし、アクセラレーター、推論、CPU、ラックスケールシステムで十分なシェアを得て、現在の成長を持続的な収益力へ変えることが必要になる。
ASML:露光装置の強固な堀と、需要のタイミング
ASMLのケースは、より構造的である。同社のリソグラフィー装置は最先端のロジック半導体とメモリー半導体の製造に使われ、AIハードウェアの恩恵を受ける多くの企業より上流に位置する。
焦点は、AIインフラ需要がASMLに重要かどうかではない。それは明らかだ。むしろ顧客が、その需要を最も高額な装置の発注へどれほど速く変えるかにある。
ASMLの2026年第2四半期の純売上高は93億ユーロ。通期の純売上高見通しは430億~450億ユーロへ引き上げられた。
1 同社は2026年第3四半期について、売上高110億~120億ユーロ、粗利益率55~57%を見込むとしている。
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生産能力の拡張が支える基本シナリオ
ASMLは、2026年に約65台とする低NA EUVの生産能力を、2027年に30%増やす計画で、2028年にもさらに30%増やす可能性を検討している。液浸DUVについても、2026年の約130台を起点に同様の計画を示した。
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この能力増強は、顧客需要の強さを示すとともに、将来売上の上限を押し上げる要素でもある。ASMLの投資ストーリーは高NA EUVだけに依存しない。既存の低NA EUVとDUV装置にも需要があることが重要だ。
アナリスト評価も前向きだ。モルガン・スタンレーはEUV出荷能力への確信が高まったとして、投資判断「オーバーウエート」を維持しつつ目標株価を1,660ユーロへ引き上げた。バーンスタインは第2四半期決算後、売上高、生産能力、利益率の進展を理由に「アウトパフォーム」を維持し、目標株価を2,500ユーロへ引き上げた。
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高NA EUV:重要な実証である一方、制約もある
IntelがCore Ultra Series 3プロセッサの一部で高NA EUVを使っていることは、ASMLにとって量産対応力を示す重要な節目である。
6 ただし、高NA EUVの採用ペースは顧客間で一様ではない。
TSMCは、1台3億5,000万ユーロ超とされる価格を理由に、少なくとも2029年までは高NA EUVをチップ生産に使用する現在の計画はないとしている。
49 これはASMLの低NA EUVやDUVの商機を消すものではないが、高NA EUVが短期的な売上・利益率の転換点になるとの期待には慎重さを求める材料だ。
なお、Intelで高NA EUVウェハーを100万枚超処理したとの情報については、ここで利用できる信頼性のより高い情報源では裏付けが取れない。そのため、投資判断の前提に置くべきではない。
1兆ドルへの道筋がより強いのはどちらか
事業ポジションの防御力では、ASMLに分がある。
同社の露光装置事業は先端半導体の製造工程に深く組み込まれている。上方修正した見通しと能力増強計画は、足元の需要の強さを示す。主なリスクは、半導体設備投資サイクル、輸出規制、サプライチェーンの実行力、そして少数の主要顧客の投資判断だ。
一方、AMDはより大きな業績レバレッジを持つが、実行上の負担も大きい。
データセンター売上の急増とHeliosの導入コミットメントは、AI事業を大幅に拡大するもっともらしい道筋を示している。しかし評価を支えるには、コミットメントを継続購入へ転換し、NVIDIAのハードウェア、ソフトウェア、エコシステム上の優位に対抗できることを示さなければならない。
到達を遅らせうる共通リスク
- AI投資の正常化:ハイパースケーラーやAIラボの設備投資が鈍れば、AMDのシステム需要と、ASML顧客の装置予算の双方に影響する。
- AMDの導入拡大が進まない:発表済みのコミットメント以上に重要なのは、再発注、ソフトウェア採用、利益率、安定供給である。
- 高NA EUVの採用が遅れる:TSMCが2029年まで導入を見送る姿勢は、ASMLの最先端プラットフォームが価格に敏感であることを示す。
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- 半導体サイクルの変動:戦略的に不可欠なサプライヤーであっても、顧客の支出変動、在庫調整、工場建設の延期からは逃れられない。
- 株価に織り込まれた期待の高さ:利益成長が速くても、将来利益への要求水準が高すぎれば、株価上昇につながるとは限らない。
両社を分ける視点は明快だ。AMDは、AIでのシェア獲得を通じた高成長シナリオ。ASMLは、リソグラフィーの主導権を土台にした「つるはし・シャベル」型のシナリオである。
Heliosが大規模に採用されるAIプラットフォームの選択肢となれば、AMDのほうが早く1兆ドルに達する可能性はある。先端ロジックとメモリーへの投資が底堅く続けば、ASMLのほうが持続性のある道筋を描けるかもしれない。ただし、2028年までの1兆ドル到達はいずれの企業にとっても、前提ではなく実績で勝ち取るべき結果である。